放送大学全科目感想 019 コンピュータ通信概論(’20)

  • 情報コース
  • ラジオ科目
  • 葉田善章先生(放送大学准教授)
  • 難易度 ★★★☆☆
  • おすすめ度 ★★★★☆

通信の基本を物理的特性から学び、だんだんと高次の話に移行、信号の表現の仕方や電気信号・電波の話、多重化などの基本技術、さらには放送、IoT、WiFi、GPSなど豊富すぎる話題の欲張り科目。テキストも300P程度と分厚い。練習問題とその解答も充実している。先生の熱意が伝わってくる。序盤には一部数式も出てくるが無視してもよい。添削問題の分量が多く(25問)、試験問題も多いと予想される。

第1回

先生の声かすれててちょっと聞き取りにくい。通信の概要について。シャノンとウィーバーのモデルも含めてだいぶ知ってる話だったので特筆することは無し。

第2回

情報の物理的通信路について。無線がメインでかなり詳しい。電波損失って周波数の二乗に比例して大きくなるのね。だから携帯の電波塔はいっぱいあるのか。wifiのチャネルは以前設定したことがあるからだいぶイメージわく。遅延波とか波の干渉(フェージング)って物理的にはどう対応しているのか?すごく気になる。技術として知りたい。

第3回

信号の表現について。三角関数の数学的な話が続き後半はほとんどフーリエ変換の話。ラジオでは非常に厳しく、テキストに載っている数式も概略だけで片手落ちな感じ。もっと詳細に知るにはフーリエ変換を真面目に学ぶしかなさそうだ。

第4回

A/D変換や標本化の話。量子化やサンプリングについてはほかの授業で既習。折り返しノイズという概念は知らなかったのでこれは貴重。ノイズが載らないようにするにはフィルターでカットしてやればいいらしい。

第5回

信号を遠くに運ぶための変調の話。信号波はそのままではまともに運べないので、長距離伝送に適した姿にしてやって遠くまで運ぶ。アナログ変調で有名なのはAM・FM。数式もついてるけどわかるようなわからんような。電子回路と組み合わせると理解が深まりそうだ。要参考文献。デジタル方式ならベースバンド伝送。これも具体例の電子機器が示されておらず、概念的にへえそうですねと納得するしかなさそうだ。要参考文献。

第6回

デジタルに特化した変調について。AM、FMに相当する変調はわかりやすいが、位相を変化させるという位相偏移変調(PSK)あたりからわけがわからなくなってくる。さらにcosとsinを同時に発することでデータ量を増やす直交振幅変調(QAM)は概論としてはわからなくもないが、数式が意味不明。複素数を使うと2次元表現できて分かりやすいね!と言われてもわからんわ!と思う。まじでやばくなってきましたね。難しい。

第7回

多重化について。多重化とは一本の電線にできるだけたくさんの情報を載せるため、情報を並列に送るための涙ぐましい努力のこと。中でも今回はOFDM(直交周波数分割多重)を扱う。直交とは、波同士が干渉しないことをいう。OFDMでは、波同士が直交するようにうまく周波数を調整して、多数の信号を同時に送る。周波数同士を離さなくていい(ベースバンドが要らない)ので狭い範囲にたくさんの信号を乗せられる。原理はわかった。でも実装方法が難しくてよくわからん。

第8回

物理的な通信路、特に無線通信について。アンテナの仕組みが相当細かく説明されている。アンテナの長さは電波の半波長くらいの時に最もうまくいく。これが波長と同じ長さになってしまうと、波が打ち消しあって受信に向かない。ループアンテナみたいなものは、中学校の時に銅線を大きく巻いて自作してたなそういえば。田舎でFMが入りづらいので、自分の部屋の天井にぐるぐるしてた。

第9回

様々な通信路について。メインは第8回と同じアンテナの話。ただしアンテナは複数の場合。携帯電話は基地局が複数あるから、そのままでは基地局同士の電波の干渉が発生する。なので携帯側で指性を動的に変えて(AAA)、妨害波の影響を減らしている。干渉が発生しないということは、複数の基地局の電波を同時に使用できることでもあり、基地局の方も端末を複数管理できるから、通信速度が倍増する(MIMO)。すげー技術だな。

後半はOSI参照モデルについて。さらっと触れられているだけなので正直よくわかんないです。

第10回

身近な通信、というタイトルだが実質wifiの話。

wifiがなぜ発展したかというと、2.4GHz帯が免許のいらない周波数帯だったかららしい。電子レンジと同じ周波数帯なので干渉する。新しい規格の5GHz帯は、干渉はないが衛星通信には影響する。アクセス制御は有線LANと同じCSMA/CA。高速通信のためには多重化が必要で、第7回でも話の出たOFDMを使っている。エラー対応のため冗長化も行われていて、符号化率(送信データ/実際のデータ)は75%くらい。

次世代wifiではついにMIMOが採用されるらしい。CSMA/CAでアクセス制御しなくてもよくなる。家に基地局が設置されるようなもんだ。

第11回

携帯電話の仕組みの話。割と雑多な話の集合なので、気になったところだけ。

1G~4Gは多重化の方法が異なる。現時点最新の4GはOFDMA(直交周波数分割多元接続)という技術で動いている。MIMOが可能になったのは4Gから。5Gはほとんど説明がないが、高速化のための高周波数帯の使用などがトピックらしい。wikipedia情報だが低レイテンシ(低遅延)も目玉の1つ。DoCoMoだと3.4Gbpsでるらしい。ギガだって。頭の古い人間からするとちょっと想像できないね。

電話番号はパンクする速さがすごく、次は060の使用が開始されそうらしい。

周波数帯は高くなるほど伝送損失が大きいので、基地局が増える。

MIMOを実現するためには、超多素子アンテナ(massive MIMO)っていう100以上の素子を持ったアンテナを活用する。

第12回

IoTの話。今回も雑多な技術の紹介がメインのため、気になったところだけ。

IoTにはLPWA(Low Power, Wider Area)という規格を使う。速度を絞って、省電力とエリアの広さを取った規格だ。細かい規格は乱立しており、LoRa、SIGFOX、Wi-SUN、ZigBeeなど。もう少し近距離になるとBluetoothになる。携帯の通信網を利用したLPWAもある(セルラーLPWA)。

第13回

衛星通信と、海底ケーブルの話。

衛星放送は衛星一個で地球の120度の部分をカバーできるらしい。日本なんか余裕、北アメリカ大陸全部入っちゃうくらいか。すげー。レイテンシが0.24秒あることがちょっと問題。電離層による電波の減衰が少ないのは1GHz~10GHzあたりだそうだ。その確実性から船舶・航空機・自動車などで電話・パケット通信を実現している(MSS)。宇宙探索衛星(ボイジャーとか)との通信はアンテナ3つ張ればできる。200億キロくらい離れているので電波が来るまで20時間かかる。

海底ケーブル。光ファイバーを使う。衛星の1/8くらいの距離だからレイテンシが全然ない。世界の通信の99%は海底ケーブルである。ゲームのようなリアルタイム性の高いアプリでは低遅延が望まれるため、データセンターが直接海底ケーブルに接続されたり、データセンター自体が海底にあったりする。

第14回

放送の話。放送は無指向性だから出力が高い。スカイツリーは10kWで出力してるらしい。テレビ電波は普通水平偏波(地面に対して水平)だが、電波が弱い所では垂直偏波も使われる。伝送方法はOFDMが使われている。1チャンネルを13セグメントに分けて多重化している。携帯用のワンセグの名前はこのセグメントによるもの。おなじみB-CASカードには暗号化を解くカギ(共通鍵?)が入っているらしい。データサービスは、XMLを魔改造したBMLとか、BML専用ブラウザとか、結構ローカル技術が入ってる。

4K8KにはBS/CSが使われる。BSCSは周波数帯の違いがある(17GHz帯と14GHz帯)。そのまんまだとケーブルを通らないので、コンバーターを使って3GHz帯まで下げるんだけど、これがWiFiと干渉しやすいので注意。変調方法はPSK(BS)、QPSK(CS)。多重化の単位はスロット。1チャンネル当たり数十スロットが割り当てられる。デジタル放送は途中で符号化の方法を変えられたりすることが利点、強み。

第15回

今後の展望というタイトルだが、メインはセンシング・計測、特にGNSS(全球測位衛星システム)の話。先生が楽しくなって付加しまくったように見える。

GNSSとは衛星から出る電波を利用して絶対座標を算出することをいう。GPS(アメリカの衛星らしい)の精度補強のための仕組みがいろいろある。まず日本を対象とした「みちびき」という静止衛星システム。2018年から運用で、GPSを補完する役割をするがこれが強力でcm単位で計測ができるようになったらしい。他にも携帯電話通信網、WiFiアクセスポイントを使った相対位置測定で、特に日本の都市部ではかなりの精度が得られるようになっている。GNSSの副産物として、精度30万年分の1の原子時計を使った正確な時刻同期の仕組みも使えるようになった。

放送大学全科目感想 015 心理と教育へのいざない(’18)

  • 心理と教育コース
  • 導入科目
  • ラジオ科目
  • 田中統治先生(放送大学特任教授)
  • 向田久美子先生(放送大学准教授)
  • 佐藤仁美先生(放送大学准教授)

第1回

教育学の概説。田中先生。田中先生は共通テストの委員会の副座長でカリキュラムに詳しい。で、その先生がカリキュラムの一般化を嘆いているという話だった。

教育は抽象化が大事。いままで自分が受けた教育だけの話をしたって一般性がない。モデル化、理論化して初めて他人に教えられような価値のある教育学になる。

教育には何かを教えたいという度合いが強くなるほど、教育効果が薄れるという特徴がある。これを教育のパラドックスという。塾講師での実感として全くその通りだと思う。

教育には教授するベクトルと引き出すベクトル(用語忘れた)があり、伝統的には前者に重きが置かれている。でも先生は後者を重要視している。赤ちゃんですら内面に持っているものがある。それを引き出してやる。

個別化と一般化のベクトルもある。経験上、個別指導塾では一般的なことより個別的な対応をした方が本人の満足度も指導効果も高い。基本的には個人の自発性に任せ、教師は補助をしてあげるというスタンスだ。これがチェーン店だと一般的なカリキュラム重視になってしまうのだろう。個別指導塾で一般的なことやるのなんて方向性が食い違ってると思うけどね。

放送大学全科目感想 013 発達科学の先人たち(’16)

  • 心理と教育コース
  • ラジオ番組
  • 岩永雅也先生(放送大学学長・2021年~)
  • 星薫先生(放送大学准教授)

第1回

イントロ。聞き手は放送大学卒(実は慶應&早稲田卒でもる)のアナウンサー、二宮朋子さん。ツッコミが的確で鋭い。

発達とはdevelopmentを明治時代に訳した言葉で、「包みを解く」という意味がある。西洋では、もともと決定論が支配していて、すでに完成されているものを明らかにしていくという意味合いが強かった。現代ではそれを反省して、環境による効果も加味され、発達とは「内在と外在が相互作用して、変容していくこと」であるという定義に変わっている。

本講義は文献購読的な講義らしい。残りの14回は、それぞれ1人の思想家をフューチャーし、文献の引用も多数していただけるそうだ。楽しみ。

心理学と教育学の研究方法の違いにも言及があった。心理学は体系だっているが、教育学は体系がない。それが、○○心理学(発達心理学とか)という呼び方と、教育○○(教育工学とか)という呼び方の違いに影響しているらしい。

心理学で扱う人たちの概説。アリストテレス、ダーウィン、ブント、ダーウィン、ピアジェ、バートレット、土居健郎(どいたけお)。土居さんはよく名前を聞く。このうちアリストテレスとダーウィンは全然心理学ではないけれど、基礎を築いた人には違いないので言及するらしい。全体的には、意識は足し算である、要素に分解できるという派閥と、そうではなくてもっといろんなものが結び合わさっているという派閥の争いになるようだ。宮崎駿にも言及された。彼はこどもが独自の世界を持っている、大人と考え方や感じ方がそもそも違うのである、ということをわかっていて、作品には大人と子供の感じ方のギャップがよく表れているらしい。

教育学は時間がなく人を紹介して終わった。デュルケム、貝原益軒、シュタイナー、モンテッソーリ、アリエス、清水義弘。中には議論の分かれる人(シュタイナーとかモンテッソーリ)もいるらしいが、面白いので取り上げましたとのこと。なんかずいぶん対象を突き放したような人だ。

第2回

アリストテレスの「心とは何か」について。アリストテレスは心理学の基礎を築いたといわれる。といっても彼の興味の中の一分野にすきない。内容はもとより、「心」というものを取り出して研究対象にしたところがすごいと思う。我々はアリストテレスの作った枠の中で考えてるんだなあ。

アリストテレスは心身一元論をとり、心は最も価値があるものだとする。ギリシャの人たちって価値の上下を大事にするよね。私は価値の上下はあんまり好きじゃないんだけど、上下がないと秩序も生まれないってことなのかな。で、理性は一元論の中からはみ出した存在らしい。矛盾してるけど、永遠のものを考えたかったという気持ちが伝わってくる。永遠=最高、至上、だから理性を持つ人間も至上、人間第一主義ということなのかな。

第3回

貝原益軒について。一番心に響いたのは「そらに覚えざることは、用に立たず」ということ。覚えていないことは使えない・役に立たないってのは昔から言われているんだな。今後の訓示として受け取っておきます。とにかく覚えるまで繰り返そう。

九州男児らしく女の子の教育についてってところがあってうるせーと感じたが男文字もやれとか学もないといかんとか言ってるだけまだましという考え方もある(でも縫物やれとかうるさい)。女性の七難(子なしとか、離縁の理由になるらしい)ってひでーなそれ。一応これにも一部分異を唱えているらしい。

第4回

ダーウィン。もともと生物学に進む気はなく、親に医者になれとか言われて育ったらしいが、いやになって5年の研究の度にでてそのあと有名になったそうだ。進化論は当時キリスト教の禁忌に触れる感じだったので論文発表はすっげー後になった。

今回紹介された文章は人間の表情と心の関係についてのもので、種の起源より後に書かれてる。表情とその根拠となる心の描写が生き生きとしておもしろい。心理学自体がダーウィンの思想にベースを置くところがある。進化論が誤用された優生学の氾濫という負の歴史もあるので、心理学者はダーウィンに複雑な気持ちを抱いているらしい。

放送大学全科目感想 011 統計学(’19)

  • 情報コース
  • ラジオ科目
  • 藤井良宜先生(宮崎大学教授)
  • 難易度 ★★★★☆
  • おすすめ度 ★★★☆☆

統計教育について研究している教授による統計学。数式をできるだけ少なくして、概念を掴んでもらうことを重視したという。扱う範囲は広範でそれなりに高度であるため、各分野を詰めていこうとすると結局それなりに数学が必要になる。数式が苦手な人にとってはそれなりに出てくる数式にひるみ、数学が好きな人にとっては物足りない授業になっているように感じる。

第1回

数Iの統計の復習をしつつ、統計学が何を目的とするのかを説明している。全体的な話が多くふわっとしていてびっくりするようなことはあまりないんだけど、どうも今後確率が重要になってくるらしい。個人的には数学的な内容を濃い目でやってほしい。

第2回

高校の確率論の復習。大学では全事象をΩで表すこと、∩はハット、∪はカップと読むことを覚えた。非常にやさしい解説で、初学者に良い。統計学的には、確率モデルをいかに作るべきかが大事、そしてモデルはあくまでもモデルであることを意識しないといけないことが大事のようだ。

第3回

確率分布について。数Bの確率論に加えて一部、積分表示の累積確率密度関数も扱う。さすがに印刷教材がないと苦しくなってきた。後半戦の離散型確率関数の平均や分散の考え方は何とか理解できた。できるだけわかりやすく説明してくださっており助かる。独立事象だと分散は和をとっても良いというのは忘れていた。式を使って証明してみたいものだ。

第4回

二項分布。最初の分布のところまでは、確か正規分布に近い形、真ん中の膨らんだ形になるんだなってとこまではイメージできたけど、信頼区間のあたりでだいぶついていけなくなった。この節で一番大事な式は E(X) = np かな。

第5回

多項分布モデル。変数の種類が多いと種類数の階乗で場合の数がかかってくるので、一気に分母が大きくなり、大変な計算量になることが分かった。あとχ二乗検定は独立か否かを調べる指数であること、帰無仮説→棄却の流れは、背理法に近いことがわかった。統計でもある関係が成り立つことを証明するのは難しいから、無いことを否定するって手法になるんだろうな。

第6回

ポアソン分布モデル。λとeの-λ乗を使って偶然発生する事象をモデル化する。二項分布を分割し、極限を取るとポアソン分布になる。つまり無限に細かい二項分布ってわけ。定義より平均はちょうどλ、分散はλ/nになる。わかりやすいね。

第7回

正規分布モデル。いままでのモデルがどれも離散的な値を取り扱うのに対して、正規分布は連続的な値を扱う(そうだったのか)。あれ、じゃあ試験の点数って離散的だから正規分布よりポアソン分布モデルの方がいいんじゃ。。?まあ仮定的に正規分布に従うってことでいいのかな。しかしいままでいろんな試験の点数分布を見てきたけど、正規分布には全然従ってないですよね。だから偏差値ってあくまで参考程度で、あんまりあてにならないのかもしれない。特に外れ値の場合なんかはそう。

第8回

正規分布モデルでの統計的推測。正直、ラジオ音声では片側検定・両側検定のところ以外ほとんどわからず。印刷教材で復習が必要。たぶん、標本が正規分布に従うと仮定して、そこから平均・分散を推定する際に、得られた値が妥当かどうかをカイ二乗検定を使って調べる、ってことなんだろうけど。。

第9回

正規分布モデル間の群間の比較について。t検定とは、複数の群間の平均に違いがあるかどうか調べること。結局それだけのことについていろんな式をごちゃごちゃやって、有意水準5%に達してるかどうかを見てるだけってことでいいのかな。エクセルだったら関数一発の所を、できるだけ数学的に正確に知りたい気持ちはあるが、大変そうだ。

第10回

回帰分析。ようやく馴染みのある話題になった。相関があるからと言って因果関係があるわけではないという有名な話も出てきた。平方和の偏微分=0を解くって書くんだったらせめて印刷教材では式を最後まで書いてほしいなー。すっきりしない。

第11回

重回帰分析。2以上の変数を使って統計を説明すること。モデルが複雑になればなるほど、いろんな罠が待ち受けている(多重共線性とか)。寄与率ってのは見かけだましの値にあることも多い。だいたい君はただの相関係数の二乗だ。相変わらず偏微分=0のところは参考文献参照と言って飛ばしている。本当の所、そこが知りたい。

第12回

モデル選択の話。変数増減法はコンピュータの発展で採用できるようになったが、手動だと単純に計算が無理に思える。最尤法も、素直な方法に見えるが、これを発展させたAICは、係数に2がついているところが全然意味わからん。

第13回

ロジスティック回帰分析。確率自体が変数によって変化する場合のグラフを考えるんだけど、式の形を見ても直観的にグラフの形が浮かんでこない。なんじゃこりゃ。0/1で表される二値の統計量に対して、Y=0である確率、=1である確率をlog(もしくはeの何乗か)を使って表すことができる、というところまではわかったが、、

第14回

主成分分析と因子分析。主成分分析は各変数の統計量への説明の度合いを按分してできるだけ少ない成分で統計量を説明できるようにすること。因子分析は、各変数の背景となる因子を定義して、各変数を因子を使って表現すること。似ているようで、発想が全然違うということが分かった。

第15回

全体の復習。本講義は数学的な説明をなるべく少なくして、概念を掴んでもらうことに重きを置いたという。でもテキストを見る限りだと、数式が中途半端に出現し、文系の人はつらくなるし、私のような人にはもうすこし厳密に話をしてほしいなあという感じがする。

放送大学全科目感想 009 アルゴリズムとプログラミング(’20)

  • 情報コース
  • ラジオ授業
  • 鈴木一史先生(放送大学教授)
  • 難易度 ★★★☆☆
  • おすすめ度 ★★☆☆☆

主にC言語を使って、ソートやリストなど基本的なアルゴリズムを学ぶ。アルゴリズム入門というよりは、C言語入門と言った方がよい科目。授業の後半は印刷教材の各章末の演習問題の解説にあてられるため、印刷教材とweb補助教材(プログラムソースが長いため別枠)が手元にそろっていることが前提の科目で、ラジオ単体で聞くのは非常に苦しい。ラジオでは無理のある科目のためおすすめ度は低め。C言語を真面目に学びたい人向け。今の時代、pythonなど近代的なプログラミング言語を使った方がよい気がするが、pythonだと基本的なアルゴリズムは1行で書けてしまうので、あえてC言語にしたのかもしれない。

第1回

プログラムとは何か簡単に述べた後、C言語入門になった。私はC言語知ってるから、言葉を聞いても想像できないこともないけど、初めての人はラジオだと何もわからんと思う。コメントはこう書きますとか、sscanfの引数にアンパサンドがついてることに注意しましょうとか言われても初学者はわかるんだろうか。#includeも意味教えないでいきなりでてきてるし。印刷教材と共に聞くことが前提のようだけど、印刷教材があればラジオ授業いらんのでは。。

印刷教材の演習問題のヒントのコーナーがある。これ聞いてると、C言語ってunsigned longみたいな変数型とか、%lfが何を表してるかとか、とか些末な規則一つ一つが全部わかってないと、何にもできないんだなあと思った。

一応全部聞くけど、単体で聞くにはかなーり厳しい授業だと感じました。テレビにしてくれ。

第2回

条件分岐について。C言語のif文とswitch文、あとgoto文だけで、45分の講義を使った。やはり、細かい規則が多くそれで時間がかかる。しょうがない。

講義を聴いているのは年配のおじさんが多いという前提というところがびっくりした。みんな行番号付きのBASICに慣れてるでしょーって。

あとは三項演算子については、使うか使わないかが宗教的議論になるという話が面白かった。私は使う派です。

後1/3は第1回と同じく、演習問題の解答例とヒント。

第3回

forループ、whileループ、do while文の話。

主に、1000回printfを書くよりも、forループ一発の方が楽じゃんという話です。

do whileって使ったことないし、どういうケースで使えばいいかわからん。forでええやん。世界は複雑じゃない方がいいって形而上学でもやったよ。

GO言語はfor文しかないらしい。道理だなあ。それもそのはず、for-while-do whileは相互変換できるってさ。

web補助教材って面倒だな、分厚くてもいいからテキストに含んでほしい。お金の問題ならしょうがないけど。

演習問題もfor三重ループとか複雑になってきたなあ。

第4回

ループの応用でモンテカルロ法による円周率の演算。いきなり難しくなった。

ざっくり説明すると、正方形と内接円を用意して、乱数で正方形内に適当に点を打つ。点の位置が円の中にあるかないかで分けて、点の数の比と正方形・内接円の面積比(1:π/4)を比較する。すると円周率が出る。これをプログラムでやれということ。

テキストないけど、試しに聞いた知識だけでJavaScriptでやってみる。

//円の中、外のカウント
inTheCircle = 0;
outOfTheCircle = 0;
//繰り返す回数
n = 100000
for(i=0; i<n; i++)
{
    //x,y に0~1の適当な数を代入
    x = Math.random();
    y = Math.random();

    //ここでは(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の正方形と、(0,1)(1,0)の扇形で考える
    //扇形の中にあればinTheCircleをインクリメント
    //そうでなければoutOfTheCircleをインクリメント
    if(x**2 + y**2 <= 1.0) inTheCircle++;
    else outOfTheCircle++;
}
//面積は正方形が1、扇形がπ/4(円の1/4)。これとn : inTheCircleが等しい
pi = inTheCircle * 4.0 / n;
document.write(pi);

↑がこのプログラムの実行結果です。だいたい3.14になるので、まあまあの精度かな?ちなみに、nを10億にすると結構な時間がかかるらしい。その代わり、精度も高い。

あとはビッグオーの話。nlognだと全然増えないねーってことが分かった。nの2乗だと途端に遅くなる。ちなみに↑のプログラムのオーダーはnのはず。

第5回

関数について。関数便利ですよね。繰り返しが減るし、何度も使われると洗練されてバグも出にくくなるし。

再帰はパフォーマンスが減るってのはよく知らんかったな。確かにスタックに積んでったり崩したりするとコストがかかるかも。どういう場合に使うべきで、どういう場合に使わないべきかは、もう少し詳しく知りたいな。

C言語は参照渡しがないという話。たしかにポインタは値渡しだから、全部値渡しでできるね。あと昔は引数が31個までしか使えなかったらしい。私の会社の開発環境もそうかもしれないから気を付けよう。

演習問題に、インクリメントしているように見えるのに画面出力は数が減っていくという引っ掛け問題があるらしい。「これは試験にも出しやすい問題です」って2回も言ってたから試験に出るんだろう。試験難しそうね。

第6回

配列の話。これから3回配列らしい。そんなに話すことあるのかなって思ったけど多次元配列、ジャグ配列・スライス(この2つは言及するだけ)とかいろいろ配列ってやることあるよね。

ヒープとスタックの話が出てきたけど、これ私も実務で悩んだことがあって、古い環境でローカル変数で大きな配列を確保すると、原因不明のエラーが出るんですよ。これはnewするようにしたら解消したんで、スタックじゃなくてヒープに確保することが重要。実際、スタックって容量どのくらいなんだろうね。あと、当時の私はどうやって問題を解決したんだろう。謎。

文字列処理の話も、昔のC言語然としていて、不便な関数ばっか。pythonならこれ数文字で書けるのに。。!ってのいっぱいあるよね。

第7回

配列その2。線形探索と二分探索、計算量について。原理のところは計算の科学と手引きとまるかぶりで、新しいことはあまりないんだけど、一つ疑問が。二分探索のための整列済み配列って、整列するのにオーダーnのコストが必要なんだから、いくら二分探索がlognだからって、整列にコストかかっちゃって線形探索と変わらないんじゃ?整列済み配列をコストを低く作るための仕組みがあるのかな。ノード型の配列にすれば毎回二分探索してリンクを繋ぎ変えるだけでいいからコスト低いってこと?あとはDBMSみたいにインデックスを抜き出してそこだけソートするっていう風にするのかな。

構造体を並べ替えるのも一緒だよね。一部のメンバのみ比較するのなら、インデックスを取り出してソートしてるのと一緒。ただ、並べ替えのデータ量が非常に大きいから、やっぱノード的にやるしかない気がする。

第8回

配列その3。スタックとキューの話と、ライフゲームの話。スタックとキューは実装としてはあまり難しいことをやっているわけではないのだけど、有限な配列を使ってどうやって実装するのか、印刷教材のコードを見てみたい。

今回のメインはライフゲームの話。ライフゲームとは、二次元空間の点の集合に一定のルールを与えて、点が消えたり生まれたりする話。中学の時、ライフゲームの本を読んで感銘を受けたことを覚えている。

そうそうこれこれ。数学的な簡単な規則から、生命や宇宙が作れてしまうっていう話だったのでスケールが大きく感動したんだよね。

今ではライフゲームもいっぱい動画が出ている。

THE RECURSIVE COSMOS: Conway's Game of Life - PART 1 - YouTube

一度JavaScriptあたりで実装してみたいなー

第9回

ファイルについて。fopenとかfprintfとかは知ってるのでいいとして、後半戦ではNetbpmという知らない画像の形式を扱う話になった。

Netpbm - Wikipedia

P3
# The P3 means colors are in ASCII, then 3 columns and 2 rows, then 255 for max color, then RGB triplets
3 2
255
255 0 0
0 255 0
0 0 255
255 255 0
255 255 255
0 0 0

PBM形式ではこんな風にフルカラーの画像を表すらしい。無圧縮のバイナリよりデータ量でかいじゃん。たしかにどんな環境でも、フルカラー画像を表すことはできるが、これは実用的のはデータ量でかすぎで難しいんじゃ。。

どうせならjpgとかpngとかを扱ってほしかった気持ちもある。

第10回

ソートについて。バブルソート、選択ソート、挿入ソートの解説をC言語で行っているのだけれどいかんせん音声ではなにもわからなかった。悲しい。印刷教材ちゃんと読もう。

第11回

クイックソートと基数ソート。相変わらず音声なんでなんもわからん。これで終わりでは悲しいので、JavaScriptでクイックソートとバブルソートを実装して、速度比較するコードを作った。コード全文は以下。

//クイックソート
function qsort(arr, left, right){
    //範囲の真ん中の値をpivotに設定する
    var pivot = arr[Math.floor((left + right)/2)];
    //端っこをカーソルに入れる
    var cur_l = left;
    var cur_r = right;

    //pivotより小さい値を左側へ、大きい値を右側へ分割する
    while(true){
        //左側はpivotより小さければOKなのでカーソルを一つ右へ移動する
        while(arr[cur_l]<pivot){
            cur_l++;
        }
        //右側はpivotより大きければOKなので、カーソルを一つ左へ移動する
        while(pivot<arr[cur_r]){
            cur_r--;
        }
        //カーソルがぶつかったら、そこでグループ分けの処理を止める。
        if(cur_r <= cur_l){
            break;
        }

        //カーソルがぶつかっていない場合、pivotを挟んだ大小が間違っているので、交換する
        //交換後にカーソルは進める
        var tmp =arr[cur_l];
        arr[cur_l] =arr[cur_r];
        arr[cur_r] =tmp;
        cur_l++;
        cur_r--;
    }

    //左側に分割できるデータがある場合、再帰的に処理を繰り返す。
    if(left < cur_l-1){
        qsort(arr, left, cur_l-1);
    }
    //右側に分割できるデータがある場合、再帰的に処理を繰り返す。
    if(cur_r+1 < right){
        qsort(arr, cur_r+1, right);
    }
}

//バブルソート
function bsort(arr)
{
	for(var i=0; i<arr.length; i++)
	{
		for(var j=i; j<arr.length; j++)
		{
			if(arr[j] < arr[i])
			{
				var tmp = arr[j];
				arr[j] = arr[i];
				arr[i] = tmp;
			}
		}
	}
}

//ランダムな配列生成
function RandomArr(num)
{
	//値を順に入れる
    var arr = new Array(num);
	for(var i=0; i<num; i++)
	{
		arr[i] = i+1;
	}
	//Fisher-Yates shuffle
	var a = num;
	while (a) 
	{
    	var j = Math.floor( Math.random() * a );
    	var t = arr[--a];
    	arr[a] = arr[j];
    	arr[j] = t;
	}
	return arr;
}

//配列の個数
var ARR_NUM = 10000;

document.write(ARR_NUM + "個の配列のソート ");

//バブルソートを行い、時間計測
var arr = RandomArr(ARR_NUM);
var start = Date.now();

bsort(arr);

var end = Date.now();

var end = Date.now();

document.write("バブルソート:" + (end-start) + "ms ");

//クイックソートを行い、時間計測
arr = RandomArr(ARR_NUM);
start = Date.now();

qsort(arr, 0, ARR_NUM-1);

end = Date.now();

document.write("クイックソート:" + (end-start) + "ms ");

実行結果

↓↓↓↓

↑↑↑↑

私の環境(デスクトップPC Intel(R) Core(TM) i5-7500 CPU @ 3.40GHz 3.41 GHz)だと、

10000個の配列のソート バブルソート:200ms クイックソート:3ms

となった。あなたの環境ではどう表示されますか。

第12回

メモリの話。ヒープ、スタックのほかに、グローバル変数、ローカル変数など、それぞれメモリ上の位置が決まっているということを学んだ。C#なんかでもメモリレイアウトを調べる方法はあるのかな。

情報学の話じゃないけど、mallocの読み方とか、「宗教的な話」って言い方を良くするけど、宗教も、それなりに根拠をもってみんなやってるはずなんで、ちょっと宗教に失礼ではないか。

第13回

連結リスト。おそらくCArrayとかstd::vector、C#のListのような可変配列を実現するためのアルゴリズムと思われるが、印刷教材なしではコードが頭に入ってこず全く不明。

C++みたいにオブジェクトをnewしまくれば結構簡単に実装できそう。あとはいかにパフォーマンスを上げるかが問題になると思う。シーケンシャルアクセスしかできないから、例えば配列の5000番目をくださいって言った時に大変。メモリ管理を完璧にしておかないと、破綻しそう。値による探索が簡単なのもこの形式の利点か。

第14回

連結リストの応用、スタックとキューの実装や双方向連結リスト、環状連結リストなどについて。スタック、キューは連結リスト使わないと、配列に制限ができちゃってどうしようもないね。固定長で大きなバッファを取るわけにもいかんし。環状連結リストってのはどういう場面で使うのかが気になる。理論としてはわかるが、実践として使う状況あるのか?双方向連結リストは、普通に思いついて自分で実装してたことがある。一般的な思想は、知っておくに越したことはないね。

第15回

最終回はscratchについて。ゲストの松下先生、山本先生の共著の親子向けscratchの本がある。買おうかな。

scratchは、なんといってもシンタックスエラーが出ないことが最高に良い所。アルゴリズムに集中できる。うちも上の子(4歳)がscratchを喜んでやっているので、とっつきやすいのもよい。かといって本格的なプログラミングができないわけではない。ちょっと慣れが必要だが、バブルソートだってできるらしい(!)。鈴木先生も2時間くらいでだいたい操作に慣れたそうだ。

放送大学全科目感想 007 自然言語処理 (’19)

  • 情報コース
  • ラジオ授業
  • 黒橋禎夫先生(京都大学教授)
  • 難易度 ★★★☆☆
  • おすすめ度 ★★★★★

コンピュータを使った自然言語処理で、今できることと挑戦の始まっている分野は何なのかを学ぶ。特に「今できること」については、どのようにその技術が成り立っているか概観だけではなく仕組みを詳細に解説してくれる。アルゴリズムのトレースもある。そのため回によっては慣れていないとやや難解な箇所もあるが、見返りも大きい。終盤は専門家や学者さんへのインタビューもあり、研究者の肌感覚もわかる。素晴らしい講義でした。

※本講義の印刷教材「自然言語処理」は、自然言語処理の入門書として定評があります。

第1回

自然言語処理の概要とその困難さ、それから歴史について。アシスタントが先生の下で学んでいると思われる現役学生さんなので好感が持てる。

自然言語とは恣意的なもので、語の指す対象と語の間に何ら必然税がないのが特徴。誰かがそう呼んだってのを一般化したものだものね。あと日本語の数詞みたいに、慣習で決まってて法則性がないものも多い。そういうのはコーパスと計算機の発展による力技で何とかなってきている段階らしい。

自然言語処理の歴史はAIとほぼ一緒で、コンピュータの発展とともに予算が増えたり減ったりしている。AIのターニングポイントがgoogleのAlphaGo(2015-2016)だったのに対して、自然言語の方はIBMのWatsonがクイズ選手権で優勝した時(2011)。WatsonはAIの歴史でもかなり大事な役割だった。いずれも計算機の発展の勝利って感じ。

第2回

文字コードと文字列探索の話。かなり基本的なところから話を始めてくれるんですね。助かります。

UnicodeのUTF-8の仕組みが分かった。マルチバイトだったのか。今まで知らんかった。

文字列探索は音声だけではぜーんぜんわからん。トライ法を説明されたけど図がないと無理です。木構造作っとけば計算量が少なくて楽だってことは感覚的にはわかるけどさー。印刷教材が届いたら、一々トレースしてるっぽいから手を動かしたり、考えながら読んでみるとよいと思う。

第3回

形態素解析とビタビアルゴリズム、未知語について。特に形態素解析が中心。

日本語は分かち書きがないから品詞分解が大変という話。英語はそういう心配なくていいよね。簡単な単語だと同音異義語(同音別品詞?)が多いとはいえ文法上有限個の組み合わせだから楽勝な気がする。日本語はかなりフリーダムだよなあ。

スコアをつけて最短スコアを導き出してく仕組みのとこは、ソフトウェア開発と全く同じ思想なので楽しい。いかにして問題を解決していくか、そこがアルゴリズムを考える醍醐味だよね。昔、東京メトロの運賃自動計算プログラム作ったときのことを思い出す。最近は機械学習でスコアをつけられるから、楽になったよね。

未知語はスコアを高くするってのも工夫の賜物だなー。ありえる組み合わせか、ありえない組み合わせかの判定のとこも面白い。ラティス構造のとこは想像力が及ばなかったから、印刷教材が来たらよく復習しておこう。

第4回

コーパスの話。コーパスが登場する前は学者が直感でスコアとか構造を与えるしかなかったが、コーパスの登場で語の出現確率や構文の適用がやりやすくなった。意味解析を含んだコーパスは活用方法によっては強い武器になりそう。確率のマルコフモデルは叩き込んでおかないとダメだな。

意味解析を含んだデータ集合という構想は自分にもあって、卒論で音楽について何かデータ的解析をやってみたいのだけど、音楽の解析ってやっぱコード進行とか、BPMとか楽器の情報とかなのかな。できれば自動でなんでも解析できるとよいのだがそうは問屋が卸さないだろう。

第5回

第4回の話の英語版。英語は品詞の決定が難しいことをtime flies like an arrowという文を例にして説明してた。機械が自然に考えるとtime filesを名詞+動詞とみるか、複合名詞とみるかで迷ってバグる。文法的にはどちらも正しい。そこで機械学習の出番となる。time fliesという組み合わせがあり得るかあり得ないか、周りの単語の登場回数や順序などを参考にして、隠れマルコフモデル、ビタビアルゴリズムなどを駆使してスコアを出していく。

コーパスに必須の情報としてタグ付けがある。意味解析したデータ集合を作る際、適切なタグ付けと、そもそもの適切なタグの定義が難しそうだ。未知の合成語を見つけた時、先頭にくるもの、来ないもの、他の単語の後ろに来るもの、単に不適切なもの(洒落でやるよね)などを全部分けないといけない。このタグ付けの作業が、コーパスを作るにあたって膨大なコストとなることが予想される。

一次元構造を持つのは文章も音楽も一緒なので、音楽解析のためにはデータにタグ付けをしないといけないが、それを音楽理論をベースにするのか、全く新しい概念をベースにするのかでいろいろ研究結果が変わってくる。自然言語と音楽は非常に類似しているので、この講義は全部マスターしていきたい。

第6回

語の意味解析について。シソーラスを使った共起語による分析の話が多かった。共起語とは、ある語と一緒に使われることが多い語のこと。多義語の意味が1つに確定しないときは、共起する語を手掛かりにして意味を確定すればいい。これは漢字でだいたい意味の確定する日本語よりも英語の方でおきやすい問題といえる。例えばbankという単語は「土手」「銀行」の意味があるが、お金の話題と一緒なら銀行、川とか道路とかと一緒なら土手と解釈すればいい。

多義語が1対nの関係だとすると同義語はn対1の関係のこと。ある語の言いかえ、例えば「うまい」と「おいしい」は同義語といえる。微妙なニュアンスの違いは当然排除できないがまだ機械がそのレベルに達してないらしい。

共起ってのは要するに相関関係の問題だと思う。講義を聴きながらどれも音楽に関連させるんだけど、あるコードが他のコードと一緒に出現する確率が高ければそれが共起といえるはず。同義語は転調した場合の相対的なⅠとかⅦとかの関係かなぁ。違う気もする。

あと意味を解釈したとしてそれをどうやって自然言語処理に応用していくんだろう?意味が分かるというのは、辞書の1,2,3番のどの意味に該当するかということだと思うのだけど、これがわかっても表面上の文字に何も影響ないじゃん?ちょっとわからなかった。

第7回

構文、語の結びつきの関係について。一次元の文を平面や立体にしているのは語の結びつきによるもの。

文脈自由文法とCKY法という基本的な手段の解説がされたが、前者は文が木構造に分解できるということ、後者は解析結果を保存しながら探索することでオーダーがn^3まで減らせること、以上のことはわからなかった。図が必要。なんでラジオ授業にしたし。

構文を考えてるのって言語学者の直観によるらしいが、構文そのものもコーパスを使ってDLで抽出できるらしい。たとえば和音構造をDLで学習させたら、よくある旋法や、特定のアーティストの好む旋法が解析できるのでは?特徴抽出は機械の得意なところなはず。何の構造を抽出していくか、何を得たいか、は今後検討の余地あり。

第8回

構文解析2回目。依存構造解析をnon-projective(係り受けが交差してもいい場合)、projective(交差しない場合)に分けて説明する。依存構造解析とは、単語・文節単位で係り受けの矢印をつないでいく構造のこと。係り受けの交差とは、1.これが 2.僕は 3.正しいと 4.思う という文の場合、1→3、2→4のように意味の矢印をつなぐと矢印が重なってしまうこと。日本語も英語も交差はほとんど発生しないので、例外的な扱いとなる。両言語とも、解析はprojectiveなものが主流で、精度は90%くらいだそう。

projectiveな依存構造解析は複雑でラジオ講義では何を言っているかほとんど不明だった。ざっくりと、矢印にスコアを割り当てていって(コーパスを参考にするのかな?)スコアが最大になる構造を選択するということ。矢印なのでループができてしまうことがあるが、ループは一つのノードとして扱いスコアを算出する。ループを含む構造はたいていスコアが低くなるし、最終的にループを含まない構造を選べばよいということ。処理の単純化のためかな。

projectiveな構造解析の計算オーダーはCKY法と同じくnの3乗。実務でも3乗ならぎりぎり実用範囲という感覚があるし、だいぶ工夫が上手なんだなと思う。

第9回

意味解析2回目。格(主格とか目的格とか)を確定する話がメイン。英語は文法上格が確定しやすい(ドイツ語なんかもっと分かりやすそう)のであんまり問題にならないが、日本語は大いに問題となる。大規模コーパスに格を付与した格フレーム構築のための技術と、その利用について解説していたが、なかなか難しく、印刷教材での復習が必須だ。

ひとつ衝撃だったのは「格にあいまいさがある文は捨てる」というところ。あいまいさがある場合は教師データとして採用しないというのだ。そうすることで、核となる規則を頑健に抽出できる一方で、あいまいさがある文を例外として扱うことができるのかな。

第10回

(今回は聞きながら書いてます)

どんどんマクロな解析になっていき、今日は文脈の解析。文脈解析とは、代名詞(照応関係)、省略、文の間の関係の処理をすること。

照応関係とは代名詞を含め、ある語の指し示す対象が他の文にも出現していること。なお、出現していないこともある(外部照応。「みなさん」とか)。コーパスで照応関係を機械学習しても6割くらいの精度にしかならないらしい。照応関係「しやすい」くらいのことしかわからないようだ。

「太郎はのどが渇いた。水を飲んだ」のように「彼は」とか「太郎は」が省略されることは日本語ではよくある。こういうのを補うことをゼロ照応解析という。格フレーム知識があると、欠けているものがわかるから少しは解析ができる。でもせいぜい50%しかわからない(50%でも高いように思える)。

文章の一貫性について。RSTという手法では、文章を談話という単位に分けて主従とか根拠とか背景とかの関係をつける。重要度に優劣をつけるらしい。一番重要な談話を核と呼ぶ。核だけ選べば要約になるというわけ。人によって解釈が異なるから、コーパスを作るのが難しい(そりゃーそうだ)。注釈付与前に「だから」「しかし」などのディスコースマーカーをつけておいて、あらかじめ談話関係を明確にしておく手法もある(でもどのディスコースマーカーをつけるかにおいて技術の優劣が付くんじゃね)。

第11回

情報抽出と知識獲得について。今回は構造の話ではなく、統計の話になった。

ある語(特に、固有名)に着目して、関連する情報をくっつけていくやり方、特定のイベントに着目して、類似の表現を獲得していくやり方、事態の間の関係をスクリプトとして記録していくやり方、どれも、ビッグデータを前提として、大規模な機械学習をおこなっていくことで、外延を少しずつ獲得していこうという試みのようだ。ビッグデータとしては、wikipediaが好まれることが多い。

知識獲得については他の授業でもフォローがされているから詳しく学ぶとして、wikipediaのような文章集合からの知識獲得って、世の中のみなさんの知的活動に敬意を払った手法だよなあって思う。哲人による直観とは正反対の方法で、みなさんの知的活動のいわば平均をとるわけじゃん。理想的には、平均中の平均の思考ができるようになればいいわけだし、民主的な知識ができるわけだよなあ。昔想像されてた「コンピュータだから間違いはない」みたいなロボット像とはだいぶ変わってきたよね。

第12回

情報検索、主にgoogleのページランク算出法について。慶應の図書館情報学でやったのと同じやった。ページランクの高いサイトからのリンクに高い点数をつけてランク高くするってやつ。あれって最初の点数(一番ランクの高いサイト)は1とかにしておくのかな。

googleのクローラーって、サイトをそのまんま保存しておくのはコスト高すぎだから、インデックスつけてそこだけ保存するんだろうけど、そういうコストの削減方法についてはどういうアルゴリズムを採用しているのか気になる。↓の本とか読んだら書いてあるんかな。

途中から乾先生へのインタビュー。

Tohoku NLP Lab / 東北大学 乾研究室

乾先生はtwitterの分析や、災害時の情報収集に自然言語処理を応用しているそう。自然言語の基礎研究の方も相当進んでいて、もう少しで常識とか背景知識の推測とかの段階まで行けそうらしい。計算量も多く相当なコンピュータが必要になるだろうが、人間って高速演算なんか必要なく楽勝でできちゃってるからすごいよね。

第13回

対話処理について。siriとかしゃべってコンシェルとか。うちではアレクサが大活躍しているけど、収録時期が古いのかアレクサは話題になってなかった。しゃべってコンシェルも今ではマイナーな気がする。

対話で難しいのは、人間が決まりきった形という意味で正確に質問に答えないことがあること。「日曜に遊ばないか」「月曜に試験がある」という会話は、暗黙のうちに提案を断っているのだけど、コンピュータが認識するのが難しい。

webやtwitterなどアクセスできる資源は膨大にあるけど、それでも会話ってのは難しい。人間が会話のパターンや構造を認識して、会話にラベル付けをしていかないと学習すらできない。勝手に賢くなるシステムってのはまだまだ不可能なんだな。

終盤はしゃべってコンシェルの開発者さんへのインタビュー。口調はtwitterから「女性の語尾の顕著な特徴を学習」するなどして実装しているらしい。応答速度は、よくある質問をテンプレにして高速化を図っているらしい。プログラムってジェネラルになるほど動作遅くなるから、スペシフィックにして高速化っていう発想はここでも汎用性があるんだなーと思った。

第14回

機械翻訳について。まずは異言語間の単語がn対nの関係にあるため、難しいという話から。それから実際の手法について。統計的翻訳が以前の主流だったけど、最近はニューラルネットワークを使った翻訳が主流らしい。

準備としてニューラルネットワークの解説があった。ありがたい。ニューラルネットワークとは、ベクトルを利用して重みづけを自動で学習させる方式のこと。入力と出力のデータを大量に用意する必要があるが、精度がとても高い。google翻訳はこいつを使ってるとのこと。

ニューラルネットワーク式なら、1語前から訳を予測するだけではなく、2語3語前、1-2-3語後からも重みづけを線形結合するだけで予測していくことができるので強い。線形、時系列のものに向いている。ってこれまんま音楽に応用できるやん。絶対すでに研究が進んでいると思うので、卒研に向けて論文をいっぱい読んでおこう(英語だろうな)。

言語や音楽みたいな人間の営みって、なるべくアルゴリズムを使わないで、枠組みはデータから得るようなアプローチをとれないのかなあ。ニューラルネットワークはだいぶデータ主導のアプローチに近くなったと思うけど、入力→出力の関係しか得られないのは制限がきついなあとも思う。概念を抽出するみたいなことはできないのかな?

第15回

まとめと今後の展望と、黒橋先生の恩師、長尾真先生(故人)へのインタビュー。

クラウドソーシングを言語資源構築に使うことについて。従来は言語仕様を専門家の直観に頼っていたのを、一般の人の言語直観を利用できるという最大の利点がある(思いつかなかったよ)。そもそも言語は一般人の慣習なんでこっちの方が優れてるはず。

ニューラルネットワークの導入について。やっぱ全自動、特徴量の自動設定ができるってのが大きい。適用範囲が広い。End-to-end学習(ブラックボックス学習)ができてしまう。なんか知らんけど解析できましたって感じになるのが新しいみたい。機械翻訳の質も一気に向上した。

長尾真 – Wikipedia

目玉は長尾先生へのインタビュー。長尾先生は2021/5/23に亡くなったばかり。科学技術文章の自動翻訳や、電子図書館システムに大いに貢献した偉大な方。60年代当時のコンピュータは1秒に数十回~数百回のオーダーしか処理できず、その状態から日本語入力システムを開発したりしたらしい。

自動翻訳システムは80年代ごろのプロジェクトで、機械翻訳の技術向上に大いに貢献し、企業からもいっぱい人が参加して、その後各企業に研究者が戻って、たくさん翻訳システムができていったらしい。こういうプロジェクト、現代でできるんか?金があるって、基礎研究ができるって素晴らしいことだなあ。

電子図書館の思想ってほぼほぼ慶應通信で習った図書館情報学のまんまじゃん。もしかしてこの先生が一人で開発したんじゃないか?で、そのうえで電子図書館は人間の知識の集積だけど、人間の頭脳はそんなもんやないと考えてらっしゃる。感情と他人への理解がまだまだ難しいと。たしかに「音楽・情報・脳」の講義でもあったように、感情が理性の上部フィードバック機構だという現代脳科学の立場からすると、コンピュータってのはせいぜい理性の世界の限定された世界しか対応できてないしね。まだまだ人間優位は揺るがなさそう。

参考: 音楽・情報・脳(’17)

先生はやりたいことをとことん追求せよと。数年でできる研究もいいが何十年もかけて追及するべきテーマを持つといいとのこと。先生は50年言語処理を研究してきた。50年ってスゲーわ。今私が50年研究できるテーマを持てるか?それは何だろう?

放送大学全科目感想 006 音楽・情報・脳(’17)

  • 大学院情報学プログラム
  • ラジオ講座
  • 仁科エミ先生(放送大学教授)
  • 河合徳枝先生(国際科学振興財団上級研究員)
  • 難易度 ★★★☆☆(暫定)
  • おすすめ度 ★★★★★

主に脳科学の知見を基に、音楽を情報学的に捕えようという目的の講義。2-4回のゲストの脳神経科学者の本田先生の講義がもうそれは衝撃的なので必聴。人類に自己解体モードという遺伝子プログラムがあることを知った。

河合先生がバリ島のフィールドワークをやっていた関係でバリ島の音楽がいっぱい聞ける。あと仁科先生は高周波の話をいっぱいしてくれるので高周波を含む尺八やら三味線やらいもいっぱい聞ける。

ハイパーソニック・エフェクトという、人類発祥である熱帯雨林での音にたくさん含まれる、20Khz以上の高周波が人間にもたらす影響と可能性について数回にわたりアツい講義がなされる。

第1回

本講義の目的は、脳科学を橋渡しとして、音楽を情報学的側面から論じるということだそういだ。いわゆる学際科目。仁科先生は音楽と環境の関係を調べている人らしい。音楽は、脳の報酬系を直接刺激するという所に特徴があるらしい。言われてみればそうかも。

私は放送大の卒業研究でちょうど音楽を情報学の立場から研究しようと思っていたので、そのものずばりという感じのテーマ。テキストも買ったので極めていきたい。

本講義も音を研究するの時のように、音楽の例を示してくれるし尺も長い。今回はブルガリアとジョージアの伝統声楽を聞かせてもらった。

ウェーバーが(またこいつか)、研究者になりたかったら他分野には目隠しをして自分野の研究に邁進しろということを言ったらしい。近代科学はそうやって発展し、精度はいいが役に立たないタコツボ研究が多数生まれた。現代ではこいつをまとめ上げて、他分野も積極的に取り込んでいくことが望まれている。私も広く深く(×浅く)統合的に学問をやっていきたいのでがんばろう。

第2回

国立神経医療センターの本田先生による講義で、脳神経系の基本的な仕組みと感性情報の需要について。

神経伝達の仕組みを聞いた瞬間に「あれこれデジタルじゃん」と思ったが「デジタルとは違って・・・」と即座に否定されたので疑問が残った。テキスト見てちゃんと勉強しよ。

要するに受容器が外界の刺激を電気信号に変換してナトリウムやカリウムのイオンの濃淡を使って伝えてるんだよね。神経伝達自体はアナログに見えるけど、やっぱネットワークの複雑さが人間の複雑性を表してるんかな。デジタルはネットワークが2層になった瞬間に計算量がバカみたいに増えるからきついもんね。

見る、聞くという行為は頭の中にモデルがあって、それとの差分を使って判断しているらしい。脳神経系の話を聞いていると仮想空間の中に生きている気持になる。学者さんの世界観ってどうなってるんだろう。

本田先生はイケメンです

神経研究所 疾病研究第七部 (ncnp.go.jp)

第3回

脳の情動神経系と音楽との関係について。今回は衝撃的だった。

生物のモードには3つあり、ストレスの少ない通常モードと、ストレスの大きい適応モード。ここまではわかる。3つめが、ストレスが大きすぎて耐えられないので自己分解するモード。要するに自殺。ストレスが高まりすぎると、自己破壊することに快感がでるように生物ってプログラムされているらしい。これは聞いたことのある激しいうつ病患者さん(n=1)の実体験とも一致している。自分でエネルギーを使うよりも、他の生物にエネルギーを残してあげたくなっちゃう(=食べてくれってこと)んだって。

マジで衝撃だった。医師って全員多分これ知ってる。

あとは感性と理性と情動・感情の関係。一般的には理性と感情が対立する概念ととらえられているけど、そういうわけではない。一体化・階層化したシステムととらえるのが妥当で、基本的には情動→情動→感情→行動出力という回路がメイン。理性は感性からの入力を処理して、情動・感情にポジティブ・ネガティブなフィードバックを送ってやるのが仕事なので、講義でも言っていたけど、理性は感情のしもべです。理性が偉いとするのは間違い。

で、以上のことを前提として音楽を捉えると面白いよね!って話だった。

第4回

音楽の特性を情報学的にとらえる回。今回も本田先生の講義。第2,3回を前提に、ここが本番って感じ。

西洋音楽の音の捉え方は、音符と音楽が1対1に対応しているという考え方。これは脳の構造と一致していない。音符と音楽の最大の違いは、離散か変化かということ。音楽は時間的変化という最も重要な要素があるのに、音符は離散的で、時間変化の要素が抜け落ちている。そして脳は、時間的変化の方を捉えやすいという特性がある。

理性って、現実を写像して単純化しがち。複雑性をとっぱらって、簡単に理解しようという気持ちがある。全体を見ないで細部を見がち。全体を見たほうがおもしろいのに。ロマン派の音楽って普遍的にみんなを感動させるのに、現代音楽や現代哲学ってこまこましてつまんねぇでしょ。現代美術も同じだと思う。西洋的な考え方はもう古いんじゃないの。

あと、研究テーマは音楽理論をベースにと思っていたけど、没だね。離散化した情報では音楽を捉えられない。むしろ時間的変化、微分でミクロを捉えつつ、全体をマクロでとらえる、重層的アプローチがいいのではないか(具体的にはどうしたらいいかわからんが)。

最後に絶対音感の話。絶対音感は、西洋12音階になるように脳を訓練することで修得する。すると、右脳が委縮するらしい。なぜなのかは言われていないが、音を12音階に強引に四捨五入みたいなことをするわけであるから、音の情報量を減らしてしまうわけだよね。音の言語化が西洋のやってることで、言語化は情報の省力化、デジタル化といえる。デジタル化は情報量を増やして近似することはできるが近似が限界で、自然界の完全なる模倣ではない。物理学もそこのところは認めている。省力化して情報を切り捨てるのは正直言ってバカになるってことだと思う。要するに理性はバカ。理性を崇拝する論調は強いけどそこんとこよく考えたほうがいいと思う。

第5回

音楽を可視化する方法について。今回からは仁科先生の担当。本田先生とはちょっと違い西洋批判トーンは控えめで、離散的な音楽の捉え方には普遍的な面もあると主張している。どこの文化でも楽譜を作ろうという気持ちがある、音階がある、つまり音楽をとびとびの値で把握しようという傾向が人間の生物的な何かと合致しているということである。楽譜は視覚優位で、これは西洋の特殊性を表しているそうだ。

高速フーリエ変換と最大エントロピースペクトルアレイ法の違いを説明し、さらに後者から、離散的な音楽の捉え方には限界があることを指摘。結局本田先生と同じ結論じゃん。

第6回

ハイパーソニックエフェクトについて。人間の耳は20kHzまでしか聞こえないと言われているけど、40kHzなどの超高周波を聞いた場合に脳にプラスの影響があるという発見の話。視床下部と報酬系に時間差で効くらしい。報酬系は時間差だけでなく持続するのでとても効果が高い。同時に、時間差と持続のせいで、何が原因なのかわかりにくくなるため今まで見逃されていた。

レコードの時代は高周波を入れられたため、わざと高周波を強調すると心地よい響きがすると好評だったという。ガムラン音楽や尺八などだと出る。オケやピアノは出ない。やはり、西洋のデジタル的な認知様式がここでも邪魔をしている。

ハイパーソニックは体の表面で聞くそうだ。でも可聴音と同時に聞かないと意味がないらしい。

いままで正直言ってハイレゾはバカにしてたけど考えを改める必要がありそうだ。生音は大事なんだな。

第7回

日本の伝統楽器について。尺八と三味線がどんだけ高周波を含んでいるか、演奏によってどんだけ微妙な音を出せるかという話。

ただ尺八単体だとどんだけスーパーソニックだと言われても全然ありがたみがわからない。わたしたちは西洋の音楽スキーマに慣れすぎてるんだ。

最後にノヴェンバーステップス聞いたけどやっぱりなんもありがたみがわかんない。尺八と三味線のパートはかっこいい。オケはいらないと思う。なんで合成したんや。西洋人に褒められてもうれしくない。

第8回

河合先生にバトンタッチ、共同体を支える音楽について。バリ島を中心とした実例がいっぱい。

そもそも実生活と切り離された純粋芸術としての音楽ってのは珍しいという話だった。アジアアフリカ圏では音楽は生活の一部だし、みんながやっている表現の一手段であって、聞かせることを想定していない。ここでも西洋の特殊性が強調されてる。パートごとに難易度が分かれていて、だれでも参加できるようになっている仕組みもある。日本だと祭りの一部分って感じなのかな。

ユニークな音楽としてケチャが紹介されてた。IIDXであったな―懐かしい、ダンスミュージックと融合したやつがあった。今思うとオリエンタリズムだけど結構好きだった。

Kecak – John Robinson – YouTube

第9回

人類に約束された快感?について。第3回の本来・適応・自己解体の生物モデルを基に、これを音楽に適用するとどうなるか。

本来→事前の訓練や適応なしで人類誰でも感動するような音楽

適応→一定の訓練を受けると感動できる音楽

自己解体→適応不可能な音楽

と説明された。なるほどーと思うけど疑問もある。ここからは感想ですが、この3つのモデルは相対的なもので、音楽の位置づけは3つのモデルを浮動すると思う。だってガムランとかバッハとかいきなり聞いて感動するか?しないと思う。すべての音楽は初体験ならほとんどが適応か自己解体の所に位置付けられると考える。でも慣れて自分の中に体系ができるにしたがって、本来の方にシフトしてくんじゃないかな。で、本来の方にシフトしやすい音楽ってのが名曲と言われるのでは。

16ビートが人類最強の音楽らしいという話もしていた。一理ある。例として流された曲は多分フュージョンだけど超かっこいいよね。でもこれはサンバとか能とかにもすでにあったらしく、遺伝子にプログラムされてる可能性があるんだって。16ビートを激しく感じる曲って私も好きだったな。例えばこいつ。

IIDX 3rd style – Schlagwerk (DPA) Autoplay – YouTube

サンバも好き

DJ Mass MAD Izm* – Beach-Side-Bunny – YouTube

第10回

ガムランとケチャを例にとって、報酬系や懲罰系が共同体に与える影響を考える回。正直報酬系の果たす役割は全然わからんかった。懲罰系のネガティブフィードバックについては全然言及されんかったし。

ガムランとケチャが16ビートをはっきりと刻んでいて、それが分業によって容易に達成されるということはわかった。ケチャおもしろいねービートだけではなくて旋律もあるのね。西洋音楽慣れした立場からすると、旋律はよくわからんのでビートだけに着目しちゃうけどね。

エレクトリック音楽が付点八分を多用するのって16ビート感出すためだったのね。

Riewo – Love’s Will – YouTube

第11回

ガムランがトランス状態を引き起こすことと、どのようにしてバリ島の共同体を自己組織化するかについて。今回も後者については全然わからんかったけど、高周波と集団心理のせいでトランスする確率がめっちゃ高いことはわかった。

脳波を計測するくだり、だいぶ大変だったと思う。でもそのヘッドギアほしいです。音ゲーやってたら同じようなトランス状態になると思うんですよ。あれ16分音符メインだし頭を考えないようにすることが本質だし、ディープに世界に入り込むことは儀式と共通してるはず。だから脳波測定機ください。毎日1時間ゲーセンに行きますので。

第12回

MIDIと電子楽器とサンプリングレートの話。だいたい知ってることだったけど昔のことをいろいろ思い出した。MIDIの登場でモジュール型の電子楽器が隆盛したのが90年代の最初の方?SC-88proが出たころだよね。私も小学校のとき、お年玉を3年貯めてSC-88VLというモジュールを買い、その音質の良さに大変感動したものだった。つってもサンプリングレート22kHzなんだけど、スーファミが精一杯だった時代からすると電子楽器の革命という感じだった。せっかく買ったので耳コピやら作曲やらいろいろやってた。私はアレンジはできるが作曲自体は不得意だったので、友達に譜面書いてもらって打ち込みと録音を担当してCD-Rに焼いて友達に返すってことを中学校の時によくやってた。

そんなことはさておきMIDIって127段階のパラメータなのね。255じゃないんだ。上位1ビットは何に使っているんだろうな。

シンセサイザーの仕組みの所もなつかしい。浪人時代に名古屋・大須でぼろい中古のシンセサイザーを買って、名古屋市立中央図書館でシンセサイザーの仕組みの本を借りて音いろいろ作ってたなあ。

あとスーパーソニックエフェクトをこの回でも推してるけど、本当にプラスの効果ばっかなのか?ちょっと疑わしい気がする。

第13回

イトゥリのムブティの子供たちが歌う歌と、12音技法の比較を通して人類にインプットされている音楽とは何かを考える回。ムブティの歌は16ビートだし16世紀のヨーロッパの楽曲とも構成が似ているとの指摘。クラシック音楽が何気に「民族音楽」と分類されていたことが面白かった。

12音技法は以前から思考偏重のゴミだと思っていたけど、やっぱりゴミだった。12音全てを平等に扱い、1ループ内に意地でも同じ音を出してやらないようにするという理論のこと。西洋音楽理論では旋律や和音の組み合わせに限界があるから、新規性を求めて生み出されたらしいが、そんなんだったら原理的に常に新しいホワイトノイズでも聞いてろって思う。生物の定常・適応・自己分解モデルの中だと自己分解に分類されることが示唆される。適応無理だよなこんなん。

第14回

熱帯雨林が人間の根源だって話と、ハイパーソニックエフェクトを推す話。

熱帯雨林のところは人間の進化の過程の話だからわかるとしても、満員電車の音に熱帯雨林の環境音から抽出した高周波を添加したらストレス指標が減ったとか、高周波浴びたらなんでもいい感じになるってのはどうにもうさん臭くて信じられない。報酬系のところを刺激するってのはわかったけどそれによって何か不都合が生じたりしないのか?

音環境から高周波がカットされているからストレス社会になってるとか、高周波を添加したら人間のかけてるところが補えるとか、そういうのもちょっと飛躍があってついていけない。

新しい技術とか、科学的根拠がまだ確定していないことって慎重になってしまう。自然食品とか、電磁波とか、そういう疑似科学とは違うんだろうけど、どうしても抵抗がある。

第15回

本田先生と仁科先生の講義がちょこっとあって、あとは各講義のまとめ。

本田先生は例の高周波成分を医療に役立てようという話をした。熱帯雨林型の音環境にすればいろいろ疾病が治るんじゃあないか、人間ではなく環境を変えていこうぜということ。一理はある。人間を変えても元に戻ってしまうことの方が多い。そういうのは環境の問題だ。

仁科先生は脳科学の怪しい知見についての警告のはなしをした。人間は脳の10%しか使ってないとか(北斗の拳?)男性脳女性脳とか。こういうのはごく一部分で得られた知見を一般化したにすぎず、過度な一般化はやめようねという話だった(それはハイパーソニックエフェクトでもいえる気がするけど)。

一部危険な気がしたけど刺激的でとても面白い講義でした。先生方ありがとうございました。

放送大学全科目感想 005 著作権法(’18)

  • 情報コース、社会と産業コース
  • ラジオ授業
  • 作花文雄先生(元文化庁審議官、弘前大学副学長・東京事務所長、現放送大学客員教授)著作権法の本を昔から書いていらっしゃる先生です
  • 難易度  ★★★★☆
  • おすすめ度 ★★★★☆

※注意:本講義は2022年に改訂される予定です

著作権の諸ルールを解説したあと、国際問題や制度の歴史にまで触れるかなり手の広い科目。そもそも著作権法は細かい規定が多く分厚い法で、放送大の科目としてはかなり分量が多い。法学に馴染みがないと苦労するだろう。

財産権の特別法たる著作権においても、他の法分野と同様に、曖昧なルールを判例や法改正によって徐々に明確にしていくという典型的プロセスの積み重ねがされてきたことがわかる。無駄に複雑な規定が目白押しなのは、著しい技術発展のせいで法概念の創出が間に合わないせいだろう。

第1回

概説から。知財法内の著作権の位置づけや役割について。まず全体から学ぶのがよいとのこと。細かいところから学んでもよくわからん。作花先生いい声してる。

不動産や動産は有体物で、独占的所有権がある。知的財産権も独占的所有権があるが物理的所有ができない。また、無断で違法にに利用しやすい。これを保護するために法的環境を整える必要がある。保護されないなら知的成果物を生み出すインセンティブが働かない。産業発展のために保護の仕組みが必要。また、公正な利用も必要だから、バランスをとった法律にしないといけない。

著作権法は創作的な表現物を保護する。他には特許や実用新案、半導体の回路配置に関する法律(略称不明)、種苗法などがある。

商標、不正競争防止は公正利用のための法律。H26に色彩、音の商標が登録できるようになった。商標は創作的でなくてもいい。識別性があればいい。他にもH26に地理的表示が保護されるようになった。GIマークという。不競法は誤認混同の禁止のほか営業秘密を保護する。判例においては複数の法律が関係することが多い。

排他的権利について。著作権は排他的。自分だけが利用できることを言う。他者は許諾、ライセンスが必要。対世的で物権的。違反すれば刑事民事の責任を負う。

適正利用について。利用全部に権利が及べば円滑な利用が妨げられ、社会にとって望ましくない。なので、権利の及ぶ範囲が各法律で定められている。著作権なら演奏とか公衆送信とか。

著作権の対象。絵画とか論文とか。創作性があるものを対象とする。社会の変化に伴い著作権法も発展する。情報社会での保護と利用の調和が大事。株価とかデータそのものは広く利用されるべきだから保護はいらないよね。場合によっては対価をあげることも必要かも。クリエイティブなものは保護されないと時間・労力をかけることが困難になる。

著作権は既得権益か。規制緩和すると短期的には便利になるかもしれないが、長期的には優れたコンテンツを阻害するでしょ。創造活動は先人が昔から積み重なった上に成り立つものだから、権利が広すぎるもの問題。バランスが大事。

著作権の構造。著作物を創作したのが著作者。複数人で作った場合、職務で作った場合、委託された場合は誰が著作者か?権利主体となるのは(図を参照)著作隣接権者という人もいる。実演家とかレコード製作者(音を固定した人)とか。演奏や放送は準創作活動といえる。出版権は著作者の契約で設定される。違法な出版物を差し止めできたりする。

保護対象物。著作者なら著作物。実演家なら実演。レコード製作者ならレコード(CD以外も全部)。放送の場合、番組ではなく、映画や映像などが保護される(?)。

著作権の独占権としての性質について。特許は絶対的独占権で、複数人が同じ特許を受けることができない。著作権は相対的独占権で、結果として同じ著作物ができても、どちらも著作者になれる(でも結果として同じになったことの主張は簡単ではない)。利用については、あらゆる排他的権利を行使できそうだけど、実際は利用態様が一つ一つ規定されている。

著作者の権利は大きく2つ。人格権的な著作人格権と財産権的な著作権。登録が必要ないので無方式主義という。

人格権は公表権(いつ公表するか)、氏名表示権(自己の名を付すか)、同一性保持権(改変の禁止)。

著作権。複製権などいろいろ。複製権は複製を禁止する。複製にはコピーだけでなくいろいろある。上映権演奏権などは、公衆に対して演奏などする行為のこと。自宅で歌うのはよい。公衆送信権も同様。展示権は美術作品など対象が限定されてる。翻案権は二次創作のこと。原則として許諾がなければだめ。

権利制限規定。著作物の自由利用が認められている場合がある。例えば複製権は絶対ではない。一定条件で複製はできる。30条以下いろいろある。辛抱強く理解していくこと。

保護期間。創作時から創作者の死後70年間。TPPで50→70年になった。

侵害の救済措置。民事上は民法の不法行為や不当利得が適用される。また特別に、差し止め請求権や、損害額の推定、10年以下の懲役など刑事罰規定もある。ベルヌ条約の加盟国の著作物も保護される。わが国で利用されればわが国の保護規定が適用される。

第2回

著作物について。保護の対象となるもの、ならないものについて学ぶ。紛争では著作物の定義が争われる。

定義「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)これに基づいて著作物かどうか判断する。

客観的に認識できるものが著作物。平均寿命みたいな単なるデータはダメ。実際の所データは労力は必要だが、これを独占すると弊害が大きい。論文やグラフは保護対象になる(かも)。だれがやっても同じになるようなごくありふれたものはだめ。創作性が必要。

人工知能で作成されたものは?まだ検討中。インドネシアの野生の猿が撮った写真は?2016年1月アメリカ、著作者は人間だけが認められるという判決が出た。きわめて常識的ですね。

「ありふれた」とは?難しいですね。判例を読むとなぜ保護されるか、保護されないのかが分かってくると思います。

ただのアイデアは保護対象ではない。学術的にはアイデアの盗用はよくないので避けないといけないが保護はされない。

著作物は無体物。記録された紙とかCDそのものは著作物ではない。著作物が記録された紙を損壊しても著作権侵害にはならない。紙の複製は侵害になる。美術館は著作権を有しているわけではない。でもお金をとったり写真撮影を禁止している。これは著作権ではなく所有権的な問題です。

著作物を明示的に定義するため10条1項にいろいろ書いてありますが、これは例示です。ほかにもあります。

1号、言語の著作物。手紙やブログも創作的なら著作物に入ります。原稿や口頭のものも含まれます。映画以外は、何かに固定されていることは要件ではないです。事実の伝達に過ぎない雑報は含まれませんが、新聞記事はだいたい著作物性があります。

2号、音楽の著作物。即興演奏も含まれます。

3号、舞踊・無言劇など。振付が著作物になります。演技自体は著作隣接権ですね。

4号、美術の著作物。形状や色彩、平面、立体などさまざまです。書道ももちろん。具体的な書だけが対象で、書体は対象ではないです。マンガも入ります。デザインは応用美術と言います。意匠法でも保護されますが、著作権法の保護対象外になるわけではないです。実用品のデザインとして作られたものもあるし、あとで実用品に採用されることもある。どういう場合に保護されるのか。著作権法的には(美術工芸品を含む。)と書いてあるだけですが、他のものも判例で含まれると解されてます。純粋美術と同程度の創作性があれば保護される、と考えられていますが、同程度ってどういうものなのか明らかではないです。

5号、建築の著作物。図面ではなく実際の建築物です。芸術的価値のあるものと解されてます。どの程度芸術性があればいいのか線引きは明らかではないです。

6号、地図や図形の著作物。学術的な図面図表とか、地球儀とか。機械の設計図は誰でも作れるなら創作性が否定されるかもです。

7号、映画の著作物。連続する映像で創作的に表現されたものです。かつては劇場用映画が代表的でしたが、今ではDVDなども含まれます。固定されていない場合はどうか。映画ではないが映像の著作物として保護される余地はあります。ゲームは?映像に変化がありますからいけそうです。固定要件はどうか。満たすと解されてます。すると頒布権が発生するかも。最高裁判決では、消尽論をとり、いったん適法に売られたら頒布権はないと判示されました。

8号、写真の著作物。やはり創作性が必要です。絵画を写真に撮っただけではだめ。創作性は、陰影とかシャッタースピードとかポーズとかを総合的に勘案して判定します。

9号、プログラムの著作物。作成者の思想・アイデアが反映されたものだからです。windowsも含まれます。言語自体はダメ。規約・解法自体が保護対象にならないのは趣旨からしてそうですが、プログラムはわかりにくいんで確認的に規定されてます。

二次的著作物。まず翻訳。他の国語で表現することです。点字とかは含まれません。古典の現代語訳もダメ。でも現代語訳に新たな創作性があれば翻案になります。編曲とはアレンジですね。楽器変えたりクラシックをジャズにしたり。変形とは聞きなれませんが、絵画を彫刻に、写真を絵画にしたりすることです。翻案はいろいろあります。文章の要約、児童向けの書き換え、プログラムのバージョンアップなど。

二次的著作物は著作物の許諾が必要です。二次的著作物の利用は二次的著作物の作者+原作者の許諾が必要です。

編集著作物。12条では素材の選択や配列に創作性を認めます。抽象的な選択配列方法自体は保護されないです。個々の素材については利用の許諾を得ないとダメです。権利侵害は、選択や配列を利用しているかどうかがポイントになります。一部の著作物が利用されているだけだと権利が働きません。

データベースの著作物。編集著作物に似てますが、性質が異なるので分けられました。情報の選択や体系的な構成に創作性を認めます。編集著作物は並べ方とか空間配置でしたが、データベースは検索性がポイントになります。個々の素材と全体の権利関係については編集著作物と同じです。創作性のないデータベースもあります。単に全件並べただけとか、だれでも思いつく方法とか。でもそういうデータベースにも労力がかかってる。ヨーロッパでは創作性のないデータベースにも独自の権利を付与してますが、わが国では何の権利もないです。

最後に、権利の目的とならない著作物について。法律や条約、通達、判決。翻訳したもの(地方公共団体のみ)。民間が作ったものは保護対象になります。

第3回

著作者について。著作者は著作物の創作をする人です。著作者人格権は一身専属権で譲渡できませんが著作権は譲渡できます。依頼した人は創作者にはならない。

創作した者、は、著作物に寄与しないとダメ。ワープロで打ちこんだだけの人は含まれない。口頭で話したものを誰かが文章に起こした場合も、口頭で話した人が著作者。固定要件がないから。書き手が独自の文章表現をした場合は(二次的)著作者になる。関与の程度が考慮される。SMAPインタビュー記事事件や静かな炎事件を見よ。インタビューを編集して取捨選択したり訂正した場合は、インタビュアーは補助者ではなく創作者と認められ、インタビュイーと共同著作者とみなされた。

無方式主義について。真の著作者をどう証明するか。特に未公表のものはどうやって証明するのか。名前を表示しておくとか防衛策とっとけとのこと。

相対性。偶然同じもの、類似のものができても独立して保護されること。特許との大きな違い。じゃあどうやって保護されるのか。侵害訴訟では相手方が複製かどうか立証しないといけない。著作者名を表示しておくと立証責任が相手に転換される。

他人を著作者とする契約は無効(著作者は変更できない)だが、著作権は譲渡できる。

共同著作物、共同著作者について。複数人が関与すれば共同著作物というわけではない。複数人の寄与が融合していて分離できないことが必要。補助的に参加している人は含まれない。分離できる場合は、集合著作物になる(法律上の用語ではない)。第1章がA、第2章をBが書いた場合など。共著、はどっちの場合もあり得る。歌詞と曲についても、それぞれ独立なので結合著作物といわれる。

共同著作物の権利行使については、バラバラにされると困るのでルールが定められている。著作者人格権の行使には全員の合意がいる(64条)。発表、氏名表示、改変のこと。ただし保全は一人でできる。話がまとまらない場合はどうするか。各人は合理的な理由がなければ合意の成立を妨げられない。また、代表者を定めることができる。冒認を信頼した第三者は保護される(民法と一緒)。

共有著作権について。一部が他人に譲渡されても共有と一緒。民法の準共有に関する規定が準用される。著作権の行使には他の共有者の同意がいる。こんなふうに共有には結構重大な効果があるので、著作権の譲渡には共有者全員の同意が必要。合意の成立は「正当な理由がなければ」妨げられないと、著作者人格権よりも厳しい。

職務上作成の著作権について。雇用者や法人は一定要件で著作者になれる。例えば作業報告とかの著作権は雇用主に帰属する。著作者人格権も雇用主や法人に移る(まじで!?)。合理性があるから(!?)。どの著作物の権利が移るかはルールを設定可能。要件について。まず法人の発意によるものであることが必要。形式的に事後報告だから発意じゃない、っていうのは認められず、実質的に発意に基づくかが大事。「職務上」は。雇用関係が必要。これも実質が大事で、派遣だと雇用関係じゃないので、派遣先との関係になる。職場で作ったものでも自分のためだけのものだったら含まれない。あと法人の名前を表示しないとダメ。将来的な話でもOK。さらに勤務規則等に「個人を著作者にします」って書いてない必要がある。

映画の著作者について。プロデューサーとか監督とかいろいろいる。著作権法的には16条で、監督とか美術とか全体的に寄与した者が著作者と規定されている。つまり共同著作物。でも29条によって原則的には参加約束をした映画会社とかに帰属する(今なら○○制作委員会か?)。15条による職務著作に該当する場合も多い。

第4回、第5回

(ランニング中に聴くことにしたので以後メモは適当)

著作人格権と著作権。著作人格権はわりと強い権利で、改変もできないし名前も表示しないといけない。でも制限規定という例外が多数設けられているので実社会上摩擦が避けられているという印象。例えばBGMで音楽流すときは名前なんていちいち出さないが、やむを得ない場合は許されるという例外規定を設けてそれなりに社会が回るようにしてある。

著作権は支分権がとても多く、やはり原則の権利自体は強い。細かい例外規定をいちいち覚えないと正確な射程がつかめない。しかし先生も根気強く覚えていってね、と言ってくださっているので、そのとおりにしようと思う。

著作権はネット時代に合わせて急速に変革を迫られているが、全然追いついていない。例えばキャッシュに著作権が及ぶか。学者がITに暗く、従前は世界的に的はずれな立法(キャッシュには著作権が全く及ばない)がなされていたという。

オンデマンド型の著作物公衆送信についても、送信可能化権をめんどうくさく細かく規定しているらしいが、もっと包括的に実装できるはず。世界的にも稀らしい。柔軟性もない。場合分けしたって複雑になるだけでいみないやん。もっと概念を洗練しろよって思う。固定要件とか放送の概念が狭いことが問題なんじゃないんか。特許法みたいに物にプログラム含むとか、概念の修正でなんとかならんのか?支分権が多いのも面倒ね。

第6回

著作権の続き。今回もたくさんの支分権について。頒布権って映画の著作物に特別に与えられた権利だけど、ゲームとかストリーミングとかの権利関係は実際のとこどうなってるのかな。あと還流レコードに時間割いてたけどもう滅びてると思う。法整備が進む前に流行りが終わってしまうこともよくあると思うのだけど、日本は法整備遅めな気がするのは、成文法ベースだからか?判例重視の米国ではどーなってんだろ?あっちは州ごとに管轄も違うし無駄に複雑に見えるから、成文法どっちが効率的かはよくわかんないな。

第7回

著作隣接権。著作権より狭く、場合によって規定がばらばらなのが特徴。業界団体の圧力で法整備が進んだという経緯のせいらしい。たしかにレンタルCDの要請で貸与権1年とか、謎の規定が多い。

既得権益の感じが強いので、例えばストリーミングの台頭とかで一気に情勢が変わったときに弱そう。

作花先生、権原を「けんばら」と読むのは「権限」と区別するためだからわかるんだけど、業務の業を「とが」って読むのは業界用語なのか?「ごう」ならまだわかる。科料の科と勘違いしてるのではないか。。

第8回

権利制限の1回目。著作権法は本当にいっぱいの制限があって、一つずつ細かい穴をあけていくような感じ。国立国会図書館が偉大だということと、絶版の古い書籍は公立図書館でオンラインで見られること、学校では著作物は使えるが塾はダメ(とは言ってなかったが学校の定義に入らないから駄目だろう)、ビッグデータやディープラーニングの解析のための著作物利用はOKってことがわかった。

第9回

権利制限の2回目。ほんとうに細かい規定ばかりで苦しい。法改正のたびにいろいろと積み重なっていって、複雑ではないのだが覚えることが多すぎ。例えば47条の6「送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等」とか一見意味不明だが、要するに検索エンジン上の著作物の取り扱いのことだった。一々例外を作っておかないと問題になるところが著作権のめんどくさいところ。もっと一般的規定にしろよ!と思うが、裁判例だけで議論を積み重ねていくのももっといやだな。

第10回

存続期間について。存続期間は他の知的財産権と同様、著作物の利用と保護のバランスをとるためにとても大事なところ、ということだそうだ。でも存続期間がなぜその長さなのかの理由ってよくわからんよな。死後50→70年になった本当の理由は何なんだ?

海外情勢的には2世代に著作権料を払うためで、寿命が伸びてきたから70年にしたんだって。なんやそれ!

第11回

利用について。著作権は権利だから対価を受けて(または受けないで)許諾をすることや譲渡をすることができる。著作者人格権は一身専属なのでだめ。

翻案権等が残存するってなんだ?よくわからん。

権利管理団体が必要なのはわかるが、JASRACみたいにすげー権限でかくなるのは解せない。ただ最近は登録制の事後チェックになり、ゆるくなったらしい。使用料の分配とか一体どうなっているのか?具体的に知りたい。キンドルアンリミテッドみたいなもんだよな。

拡大集中許諾制度よくわからん。印刷教材みるしかない。裁定は特許と同じやね。でも供託金いるのか。ただ排他的権利を制限するのは条約的に問題あるらしい。ただ今は古い動画の著作者不明のものを使いたいから、裁定が見直されてるらしい。

第12回

侵害と救済について。ほぼ特許と同じ規定であまり面白みはない。無体物の特性を鑑みて民法の不法行為よりも救済を手厚くしているという趣旨なのは同じ。特にダウンロード周りの規定がいちいち細かいが、徐々に侵害が認められやすくなる方向であるというのは感じられた。

第13回

国際的保護について。条約は基本的に全世界で守る著作物保護の最低ラインという位置づけだが、実演家レコード条約ではレコード会社が過剰に保護され、国際的に強い企業(アメリカと思う)の圧力がそのまんま通るという、国際法でありがちな強者論理がまかり通る状態になってた。やっぱ選挙で縛られる国内法と違って、ゆるい道徳しかない国際法はつらいものがある。

第14回

著作権の歴史。著作権のはじまりのとこは興味深いが、現代の改正のとこはいままでの内容とめっちゃ重複している。映画の保護期間70年延長の問題は、2回聞いてもわからん。印刷教材で読んどこ。発達障害の人のための制限規定は知らなかったな〜。私にも使えるかもしれん。

TPPはやっぱ保護機関の70年延長が一番インパクト強いよな。改正のときアメリカの強いコンテンツの保護だって言われてたけど、理屈としてはホントはどうなんだろね。

今後の話。情報化に対応して円滑な利用が進められることを先生は願っている。

著作権は時代遅れ論とか具体性のないパラダイム転換とか大風呂敷を広げた論は、目新しいだけで法の歴史を無視しており現実的でなく、全く意味ないと言いきっている!!先生かっこいい!!

第15回

現代における課題。雑多な話題の回だった。

まず私的利用と業との関係について。カラオケキャッツアイ事件、放送ではわかりにくいが大事な判決なので後で読もう。クラウドサービス上の著作物をアップするのは私的使用の範囲内でよいらしい。

貸レコード業→貸与権の流れだったのか。中古ゲームソフトは劣化のないデジタル物というとこがポイントらしい。

違法行為のプロパイダ責任。きほん責任を負うのは酷なのでナシ。権利侵害告知があったら消そうね〜くらいらしい。P2Pソフトを作ったやつの責任はどうか(ウィニー事件?)。米国のブログスター事件は作ったやつが負けた。日本はファイルローグ事件で責任を認めた。ウィニー事件は映画を送信したやつは責任を追ったが、作ったやつの幇助は認められず。無罪。ウィニー事件は確か本が最近出てた。読もう。

日本にはフェアユース規定がなく検索エンジンがしょぼいという見解は不当という話。先生はアメリカの事情を考えるべきといってる(ようわからんので印刷教材読もう)。

グーグルの検索で出てくる短いスニペットはどうか。フェアユースに該当するらしい。フェアユースってなんだろな。変容的利用に過ぎないってさ。米国著作権法にも手を出してもいいなあ。日本でも権利制限規定の一般的なやつを導入すべきという意見もあるらしい。研究開発を円滑にするには必要だね〜と先生〆て終わり。

放送大学全科目感想 003 音を追究する(‘16)

  • 人間と文化コースなど(他コースでも共通)
  • 総合科目
  • ラジオ講座
  • 大橋理枝先生(放送大学教授)
  • 佐藤仁美先生(放送大学准教授)
  • 岸根順一郎先生(放送大学教授)
  • 高松晃子先生(聖徳大学教授)
  • 亀川徹先生(東京藝術大学教授)
  • 坂井素思先生(放送大学教授)
  • 難易度 ★★☆☆☆(放送授業は★☆☆☆☆)
  • おすすめ度 ★★★★★

あちこちに貴重な音が入っているので倍速再生するのが勿体無い科目。放送大学ではおなじみの大橋先生と佐藤先生が聞き手になるラジオ番組形式のため、非常に聞きやすい。文理横断型の総合科目で、音に関して幅広い知見が得られる。個人的には理系の話が基本的すぎて物足りなかったけど、あんまり専門的にしても聞き手がついていけないからしょうがない面がある。印刷教材でも特に岸根先生の回の記述が控えめになっており、他の人と同様にもっと突っ込んでほしかった。放送授業のおすすめは6-8回目の高松先生担当の講義で、演奏例が非常に豊富で面白い。

第1回

イントロ。まずは先生の紹介。

岸根先生は物理学の先生。合唱団所属のこと。音波という観点から教えてくださるそう。バッハ無伴奏パルティータが好き。ギター編曲もあるらしい。蚊の羽のうなりがにがて。

高松先生は音楽学。古いオルガンの音が聞こえてきたのを耳コピしてたり、吹奏楽と合唱を経験している。私と同じやん。イギリス音楽がご専門。馬の蹄の音を聞かせてくれた。周期的だが全く同じではないところが好きだそう。電車の発車音が途中で切れるのが苦手。最後までやれよ!と言う気になるらしい。

亀川先生は録音が専門。吹奏楽とオケ部に所属。企業→大学へ。好きな音は色々考えた結果、笹が風にそよぐ音を聞かせていただいた。窓ガラスを引っ掻く音はいや。

酒井先生は経済学の先生。経済と芸術の関係、運営など社会科学的アプローチも取っているそう。好きな音は弘明寺の除夜の鐘。落ち着くし共同体を連想させるし、音は人によって捉え方が違うのにみんな同じ音だと思っているのは何故か、を考えると楽しいですよねとおっしゃっている。苦手なのは国民保護サイレン。なんですかそれ。わざと不気味に作ったらしい。

佐藤先生は臨床心理学が専門、っていうか心理士。自分の語りがクライアントに影響を与えるので、音が重要だとおっしゃる。好きなのは沈黙。音のない音も重要とのこと。亀川先生も同意している。苦手なのも静寂。

大橋先生は異文化間コミュニケーションが専門。レコードをお父さんがかけていたので音楽には馴染みがある(環境は大事だな!!)。コミュニケーションで音声を使うことに興味がある。好きな音は波。海が遠かったので海が長期休みと結びついてるらしい(わかる)。掃除機の音がダメ。掃除も嫌い。

岸根先生の伝えたいこと。音波は空気の振動。音波と私たちの感じる音は別ものということ。プラトンとアリストテレス、ピタゴラスの話をしてる。アリストテレスは現象、ピタゴラスは物理的にとらえてる。

佐藤先生は認知心理学の知見から、インプットに対する感じ方の違いと違いを感じてほしいそう。

高松先生は楽器の話、縦と横の関係?の話で、音楽をたくさん聞かせてくれるそう。

亀川先生は音の響きと部屋、身の回りの音、記録された音と技術的な話。

大橋先生は、言語と音の関係の話。放送教材の特性を生かして実例をたくさんきかせてくれるそう。

酒井先生は社会、共同体と音の関係。教会やお寺の鐘、歴史的な事件と音の関係。音から共同体の意識ができていく過程について。うるさい、不快な音について。なぜ不快なのか。どう言う理由があるのか。

大橋先生は聞こえていない音を聞くのでなく聞こえてる音に気をつけてくれ、とのこと。好ましくない音が気になると大変なことになってしまう。

高松先生。大学院生のとき、小道沿いに小川が流れていた。夜真っ暗だったとき、小川の音が大きく感じた。音が道しるべ+警告音になるので真剣に聞いたそうです。

アツい教科ですね。音楽をスキップすると勿体無いので、次回からは等速再生にします。

第2回

岸根先生が物理的な音についての説明をする回。

まずは光と音の共通点と相違点について。音は人間が出せるけど光は出せない。光はシャットアウトできるけど音はできない。たしかにそうだね。音も光も見えないから、物理学的には水の波のアナロジーでいろんなことがわかっていったらしい。音は媒質が必要だけど、光はいらない。これは物理学的には大問題だったらしい(音と関係ないので話はここまで)。光について学ばなくてはね!

ドップラー効果の音聴かせてもらった。

音の波長は日常のスケール。数センチ~数メートル。だから、日常に存在する障害物にあたった時大きな影響をうける。波の回折という。コンサートホールの壁のヒダを見るとちょうど1メートルくらいで、音をかなり吸収する。障害物が大きすぎても小さすぎても影響はない。

波の干渉について。2つ干渉するともう原型をとどめないような形になる。楽器の波は干渉によって豊かな音が作られる。

音の規則性について発見したのはピタゴラス。金槌の音やゴム紐を使って数学的な規則を見つけていった。ピタゴラス音階というのもあるらしい。プラトンとアリストテレスも音の考え方が違う。プラトンはイデアの人なので厳格な440hzはあるとみなすが、アリストテレス は現象密着の人なので無理、数学は使わないぜという。アリストテレスのせいでルネサンスまで数学的な考え方はお預けとなった。ありゃりゃ。ガリレオが現象と数学の融合を取り戻した。

耳が感知できる音圧は20マイクロパスカル。1平方メートルに蚊が1匹に相当する鋭敏なセンサー。ウェーバーフェフィナー?によると感覚機能は割合、比でしか分からない。対数の世界になる。音圧はデシベル(対数)で考えてる。物理学では説明できない。謎。

媒質の話。酸素窒素の混合でなければ音の伝わり方は違うだろう。ファインマンがひとつだけ後世に残すとしたら、全ての物質は原子からなる、と残すという。コップ一杯の水を全世界の水で薄めてもう一度掬うと、さっきのコップの水の分子が100入っている。ヘリウムで声が高くなるのはヘリウムが軽く、音速が速くなるかららしい。3倍くらいになる。

第3回

音の認知を生理学・神経学的観点から。佐藤先生の担当。まずは生物で学んだ耳の機能のおさらいから。

耳鼻科の先生に話を聞いてる。妊娠3か月でもう耳(耳介)ができてるらしい。耳介では音の方向を感知するが、人間は耳介を動かせないので、自分で体を動かさないといけない。でも学習でも音の方向は学べる。耳は2つなのに上とか下とかもわかる(すごい!)。外耳道は3khz〜4khzの音がよく聞こえる。大きさ的によく共鳴するため。騒音に晒されるとここの神経がダメになって難聴になる。それで聴力検査は1khzと4khzの音を聞き取るようになってる。

中耳。蝸牛と耳小骨の関係の話。耳介は鼻と繋がって換気をしている。鼻を閉じて何度も唾を飲むと聞こえにくくなる。鼻と繋がっている耳の気圧が下がるから。鼻が詰まってる時と同じ。鼻水が中耳炎を引き起こすメカニズムも同様。

内耳。蝸牛と前庭と三半規管。蝸牛は螺旋状で3cmほど。蝸牛菅にはリンパ液が入っている。蝸牛内の毛が周波数ごとの音を担当している。三半規管。体が回転したらリンパ液の回転を検出する。眼球とも関係している。前庭は方向、傾きを感知する。リンパ液の働きは多様だな。

聴力検査。音の強さはPaとdb。ホンは聞こえの大きさ。年齢を重ねると高音域から聞こえなくなる。そうするとまず子音が聞こえなくなる。音はわかるが何を言ってるかわからない。若いうちに色々聞いておかなきゃだめだね。標準検査では125ー8000hzまで聞かせる。実際の音を聞いた。500、1000、2000、4000、8000hz。最後のはだいぶ高い。16khzはさらに1オクターブ上か。ひらがなの文字を書かせる検査もある。

伝音性難聴と感音性難聴。前者は鼓膜まで音が伝わらないこと。中耳炎、耳垢でも起こる。中耳炎は子供は気が付かないので注意。後者は蝸牛から神経までの伝達がうまくいかないこと。突発性難聴、メニエール病が代表的。老人性難聴もそうで、コミュニケーションが嫌になり認知症の原因にもなる。補聴器、人工内耳は必須!

耳鳴り。他の人が聴こえる耳鳴り、聞こえない耳鳴りがある。生理的なものはキーンとなったりするやつ。病的なものは脳血管障害でも起きる。治療は早めに。内服薬でも治ったりする。トレーニングでも治る。カウンセリングと組み合わせる。頭がなる頭鳴というのもある、原因はよくわからない。耳鳴りを作曲したのがスメタナの弦楽四重奏第一版最終楽章。聞かせてもらえる。あとシューマン交響曲第2番第一楽章冒頭のトランペット。けっこう耳鳴りに悩まされた作曲家は多い。

第4回

(今回からランニング中に聴くため感想が簡素になります)

音楽と感情の関係について。心理士の星先生を交えつつ、佐藤先生と大橋先生がいろんな音楽を聴いて対談する回。

まずは音楽は感情を伝える要素が大きいということ、そして感情の伝達は音楽体験に左右されないということを学ぶ。そしてチャイコ、ショスタコ、ベートーヴェンの曲を実際に聴いて佐藤先生と大橋先生の感想を聞く。音楽は感情を大まかには伝えられるが、ディテールは背景や歴史を知らないと伝わりにくいこと、最後に音楽はスキーマにのっとって解釈されることまで学ぶ。

上昇・長調→明るい、下降・短調→暗い、というスキーマが私達にはあるが、例えば民謡は短調なのに明るい。マイムマイムを思い起こすと、めっちゃ単調だがキャンプファイヤーで盛り上がるときの曲だ。大橋先生の教養が光り、あれはユダヤ民族の水が出てうれしい時に歌う歌だと明らかになる。さくらさくらの演奏も大橋先生のファゴットが光る。とても楽しい回でした。

第5回

岸根先生が音波の物理的性質について解説する回。縦波と横波、振動数や波長などについてのいわゆる高校物理的解説がメインだが、フーリエ分解などにも踏み込む上にとても分かりやすい。こんな風に講義してみたい。純正律と平均律の違いにも触れる。グレゴリオ聖歌と平均律クラヴィーアも聞かせていただける。グレゴリオ聖歌って純正律だったんだ。

だいたい知っていることだったので1点驚いたことだけ書くと、ニュートンは音速を280m/sと導出したがこれは間違いで、ラプラスにより330m/sと改められた。これは空気をニュートンは等温変化すると仮定したための誤りで、正しくは断熱変化だったからだという。断熱変化はポアソンの式、等温変化は内部エネルギーが変化しないことあたりを使えばこの1.2倍程度の差が説明できるのかなぁ。いずれやってみたい!

第6回

高松先生による楽器の話。今回は今までで一番実例が豊富で、聞いていて飽きない。

楽器の分類法から、どうやって楽器が音を変えているのかに踏み込んでいく。ホルンの構造に一番時間を使っている。印象的だったのは調和を尊ぶ西洋音楽は実は特殊だってこと。アフリカ、アジア、どの地域もノイズを効果的に用いたり、不調和なのを楽しんだりする音楽が多く、そしてこれが世界では多数派だということ。

とにかく実例が楽しい。三味線はかっこいいし、スーホの白い馬でおなじみ馬頭琴も聞けるし、ジンバブエのムビラやインドネシアのガムラン音楽で使うサロンの実例まで聞ける。これ全部揃えてる聖徳大学ってすごいんじゃ。

ムビラ

Mbira music master piece Live – YouTube

ガムラン

Sound Tracker – Gamelan (Indonesia) – YouTube

かっちょええ

第7回

高松先生による声の話。まずは裏声、地声の話。裏声の例としてカウンターテナーが出てきたけど、日本で有名なのと言えばこれだよね

もののけ姫 – YouTube

地声のブルガリアの民謡も超いけてました。私の知ってるこういう系だとウクライナのdakhabrakhaですかね。

DakhaBrakha – Monakh – YouTube

高松先生は東洋西洋アフリカ問わずフラットに紹介してくださるのですが、西洋音楽を改めて聞くとなんでも西洋音階に押し込めてしまっていて、なんだか貧弱に聞こえてしまうのですよね。ただこれは私が最近西洋をdisっているから思っているのであって、西洋現代哲学マジつまんないなと感じていることから発しているという自覚もありました。

で、最後の方に西洋的発声かつ東洋音階の声と、西洋的音階の東洋的楽器の融合した曲を聴いて、ああなんて浅はかな考えをしているんだ、音楽っていうのはそれぞれがそれぞれのf(x)を使って自らの表現したいことを写像にしてるんじゃん、f(x)に優劣つけるなんて実にばかげたことだなと思いました。そしてラストはドビュッシー。きれいですねー。西洋音楽disっててすいませんでしたごめんなさい。

第8回

高松先生による音の縦と横の話。縦も横も時間軸の話なのだけど、縦は五線譜上のみんなの音、横は和声とか曲の進行上の話。縦を合わせるのは音程の時と同じで、西洋だけ。いかにずらすかで優劣の決まる音楽もあるらしい(ミャンマーが例にされてた)。確かにな―日本の音楽もずれずれじゃん。

講義の目玉はライヒのPiano Phaseを聞きながら3人でニコニコ生放送みたいなことをしてるやつ。その名の通りピアノ2台の位相をずらしていくのだけれどスピーカー2人の感じ方がライブで伝わってきてすっげー面白いし、私とも感じ方が違うので、ほんと音楽ってのは個人個人の資質や歴史によって受け取り方がガラッと変わるんだなと実感した。

Piano Phase visualization – YouTube

↑Piano Phaseを映像化したやつ。たのしい!

第9回

亀川先生の響きについての話。無響室のトランペットの音を聞いて、リバーブをかけた音を聞く。最近の音響技術だと、人工的なリバーブは簡単な計算で得られるから楽みたい。コンサートホールの話がメインで、みんな詳しい。佐藤先生による感覚遮断室の話もある。

ちょうどよい残響を得るために現代ではいろんな工夫がされていることが分かった。スピーカーで残響を継ぎ足したりもしているらしい。あと、ロックとオケでは求められる響きも全然違うことも、言われてみればそうかと思ったが、意識したことはなかった。地元の中程度のホールだと、どちらのコンサートでも対応できそうな感じがする。

第10回

亀山先生の録音についての話。デジタルとアナログの話はだいたい知ってたし、デジタル録音が瞬間瞬間の写真のコマを並べたやつってのは先生それちょっと違います(音は1次元表現なので)って思ったけどわかりやすくするためにはアナロジーとしてはしょうがないかな。

エジソンの人類初の録音が聞けたのはとても楽しかった。そして佐藤先生が「メリーさんの羊だ!」って即座にわかるのすごい。

デジタル録音とアナログ録音によって録音機材の使い分けがされているというのも面白い話だった。アナログは音がなまる(マイクがしょぼいのと、テープが特性的に高周波数帯を記録できないからだろう)から高音域を高めに記録する必要があったこと、デジタルはデジタルで三味線とか耳に響く音が減衰しないのでつらいこと、人類がみなヘッドホンで音楽を聴くようになったからまた録音が変化してきたことなどを教わった。

第11回

言語の音について。序盤に大橋先生が発音の構造を簡単に説明したあと、中国語の先生をお招きして中国語の発音の仕組みを詳しく解説する(印刷教材に未収録)。

中国語は母音、子音のほかに声調があるのが特徴。これは昔の中国語は1字1意味にしたい、同音異義語を作りたくない気持ちが強かったので、できるだけ音節の種類を増やしたいという事情がある。今の中国語は相当単純化されたらしいが、声調は4種類なので単純に母音*子音のさらに4倍の種類がある。中国語は勉強したことがあるけど、同音異義語がかなり少ないので、文脈があればまず意味のあいまいさに悩まされることはないと思う。

言語と発音は切り離せないので、英語やフランス語、ドイツ語の発声はまじめに練習しないとだめだなと感じた。今まで伝わればいいじゃんって軽視していた。

第12回

言語学の先生をゲストにお招きして、オノマトペの話。ざっくり、オノマトペは音を転写した側面もあるが言語文化に左右されるよね、ということだった。

言語について考える。たとえば「りんご」という単語とりんごそのものには全く相関関係や因果関係がない。同様にオノマトペだって「ざわざわ」という単語と騒がしい感じって全く因果性がない。そう考えると言語って全てが恣意的なもので、変わりうるものなんだなーと思った。「ざわざわ」を例に出したのはこれカイジで生き死にがかかっている緊迫感を出す効果音として使われているから。だからカイジ知ってる人が「ざわざわ」を見たら「あっ死ぬかもしれない」っていう感情が想起されるわけでしょう。人によっては「High & Low The Worst」の略を「ざわ」っていう人がいるから「ざわざわ」を見たらイケメン集団のイメージが想起される人もいそうだ。

こんな風に言語は恣意的で人類普遍性がないから、あとは経験則で攻めていくしかない。音と経験を強引にでも結びつけるのは使用による反復。で、その反復による条件反射がないと私たちは生きていくこともできない。けっこう危ういものに頼っているように見えるけどなかなか強力で、不思議な感じがする。

第13回

坂井先生の担当で、音と社会について。渋谷区で17時に流れる夕焼け小焼けを聞く。都会ほど防災無線でこういうの流してるらしい。確かに今住んでるところや田舎の実家では聞いたことない。杉並区とか、八王子のニュータウンでも流れてたな。共同体意識の希薄なところほど、共通の音楽を聴いて共通の意識を持ってもらうという意味合いがあるらしい。

音が文化的観念を作るという例としてチャイムや寺の鐘が有名。寺の鐘については江戸時代は毎日2時間ごとに鳴らしてたという話が驚き。たしかにどの小説にも○○の刻って書いてあるけどどうやって知るんだ?時計ないのに?って思ってた。そーだったのか。

決まった時間や決まったタイミングで音を鳴らすのは生活習慣強化な意味合いも強そう。12回の話を出すなら、音と生活には全く必然性はないわけだから、わざと音を鳴らして生活を規律することもできるわけだよね。例えば毎日20時半に蛍の光かけて子供寝かすとかできるんじゃ。。

第14回

坂井先生の騒音の話。音を騒音と感じるかどうかには主観的な要素が大きい。単純な音の大きさではなくて、毎日の繰り返しや、自分にとって意味のある音など、気になると騒音になるという面がある。

でも規制するには基準を作らないといけない。とりあえず大きさが一つの尺度になっている。気になるかどうかは個人間で何とかするしかない。

大橋先生が保育所の泣き声を騒音として録音していたのでちょっとうっとなったけど、どうも建設中の騒音が結構デカかったのが原因らしいと後でわかった。建設音はみんないやだよね。それと結びついたら、建設音が思い出されていやになるかもね。

第15回

まとめ。全員大集合して感想大会だった。

みなさん、他分野への尊敬がすごいです。全員が「考え方が広がった」と言った。

ただ大橋先生だけちょっとひっかかって、「デジタルって情報を減らすことなんですね」と言っていたがそれは言語学だって同じだと思う。文系理系問わず学問というのは情報量を減らしていく学問のはず。減らしたとしてもその間に複雑な関係がいっぱい発生するから、学問って面白いわけじゃん。岸根先生が「私の分野は現象を記述するだけですので」とめっちゃ謙遜して物理学を捉えているのに対して、文系の先生方って理系分野を敬して遠ざけているような感じ。理解しようと思ってない。なんでなんや。

放送大学全科目感想 001 AIシステムと人・社会との関係(’20)

シラバス参照 (ouj.ac.jp)

  • 情報コース・総合科目
  • ラジオ講座
  • 山口高平先生(慶應義塾大学教授)
  • 中谷多哉子先生(放送大学教授)
  • 難易度 ★★★☆☆
  • おすすめ度 ★★★★★

序盤では、AIの歴史とともに、当時のAIがどのような仕組みでできているかも詳細に解説してくれる。仕組みをトレースするのはとても面白い(情報コースの人なら)。

中盤以降はAIの活用例と今後の課題について。ここら辺は数年で大きく変わるから賞味期限が早そう。慶應理工学部や幼稚舎、都内公立小での実践例は楽しく、ああ都心部ってこういうとこ恵まれてるんだなーと感じた。

今の所AIは人力に多くを頼っており、自動で賢くなるようなイメージは間違っている。ディープラーニングは所詮相関関係しかわからないので「なんかわからんがこういう傾向がある」ということしか学習できない。意味や構造は人間が解析して定義してやらないとまだまだ難しい。

全体的に、先生がいろんなことを紹介したいんだけど、しきれない、という雰囲気が伝わってくる。

第1回

AIの誕生と1960年代の第一次AIブームについて。汎用的な問題解決を目指したが、当時のコンピュータは遅いこともあって、入力が極めて限られており、ごく定型的な問題しか解決できず、実用性がないことが欠点だった。原理は素晴らしいんだけどね。LispとかprologとかAIの流れで出てきた言語だったんですね。

探索について。これしっかり学んでおかないと、AIプログラミングするとき、無駄に処理時間がかかるプログラムができてしまいますね。

AIスピーカーの原理が1960年にできていたとは驚き。イライザと言うらしい。siriにイライザって何?と聞くと、歴史を教えてくれるらしい。応答パターンを山ほど用意しておく、というやりかた。確かに、Alexaも応答パターンがあるんだなーって感じの動作をするね。

ディープラーニング、ニューラルネットワークも実は古い技術であるという。1960年の時点で、ロボット科学にもかなり応用されている。すごいな

マシンパワー不足もあり、全然複雑な問題は解けず、第一次AIブームは終わる。

第2回

1970年代の話。ヒューリスティックスとは、必ず正しいのではないが、だいたい正しい知識のこと。これを目指したのがスタンフォード大学。

プログラム言語でおなじみのif-thenルールはこの頃(1970年代)に出来たらしい。

マイシンという医療診断システムについて詳細に解説する。テキストがないと意味が分からない。トレースしてみてはじめてその構造が分かるようだ。プログラムに慣れていればわかりやすそうだが、初学だと辛そう。

ルールベースは、AIっていうより、構造化されたハードコードの集合体という感じ。開発には5年もかかったらしい。頑張ったことはわかるが、正直、開発コストに見合わない。私がエンジニアならやりたくねーです。前向き推論、後ろ向き推論は、大事な概念になりそう。

推論の過程を全部表示してくれるってのはとてもいいアイデアですね。私も採用したい。

ルールモデルを検証するテレイシアスもすごいらしいのですがラジオだと全然わからない。テキスト読まないと。

第3回

1980年代第二次AIブームについて。マイシンの成功によりまたブームが訪れる。

エキスパートシステムであるためには、知識と推論エンジンを分離することが大事。現代のプログラム開発にも通じますね。全部プログラム言語内に知識を入れた開発もあったそうですが、今の開発手法から見ればナンセンス。DBなしの知識ベースには無理がありますね。

prolog楽しそう。やってみたいですね!!ただ難しくて、実際に先生が講義したら1年かかったそうです。LISPの方がメジャーらしい。

日本で開発された第五世代コンピュータ(FGCS)は意義はあったが産業貢献はなし。かわいそう。

この時代のAIって自動進化する仕組みは全然なくて、人間が全部手順やらデータやらをセットしてあげないと使い物にならない状態ですね。機械学習するための処理速度も容量も、データセットも全然足りないからでしょうけど。

第4回

第3次AIブームの前知識として、90年代に発展した手法である決定木、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシン、パーセプトロン、ニューラルネットワーク、ディープラーニングなど現代でも有名な手法についての基礎知識を学ぶ。ゲストの中谷先生が解説してくれる。

バックプロパゲーションで結合加重を変えていくとき、必ず誤差が減るように加重をコントロールしていく。そうすると訓練データによって過学習が起きたり、多層で学習すると影響が極端に大きくなったり、小さくなったりする。そうするとニューロンのネットワーク構造や層の数をどうするか、ということが非常に難しい。

例えばプラントの故障について。故障は滅多に起きないから、ほとんどのデータは正常である(アンバランスデータという)。学習はうまくいかない。

畳み込みネットワークは詳細に解説してくれているみたいだが、ラジオでは意味不明。フィルターが重要なんだな、だいたいのことを把握しているんだな、ということだけわかった。

リカレントニューラルネットワーク、フィードバックの仕組みはよくわかりましたが、処理速度が大変なことになりそう。

報酬、忘却もシミュレートするんですね。確かに必要ですよね。強化学習は魅力的だけど、現代でも時間がかかる。アームで物をつかむだけでも数十万回の試行が必要。大変ですね。

第5回

2012年、googleのディープラーニングによる顔認識が広く知れ渡り第3次AIブームが始まる。チェス・将棋・囲碁のAI制覇の様子などエキサイティングな話題になってきた。

現代のAIの特徴はデータ量・計算量で圧倒し「物理で殴る」システムが多いということ。将棋の藤井くんもAIと打ってAI特有の癖がわかってきているという。デイトレ勢も同じことを言っていたような気がする。2021年現在でも、格ゲーのCPU攻略法と一緒でまだまだ機械は機械だとわかるような状況なのだろう。

犯罪予測で犯罪が半減、スシローのネタのトレンド予測でマグロの廃棄量が75%削減と聞くとAIめっちゃ役にたってるやん、と感じる。

AIは人間の仕事を一定程度奪うかもしれないが、まだまだ弱い。ディープラーニングは、相関関係しか理解できないから、真の相関があるのかどうかは、人間が判定しないとわからない。統計学と同じ原理だ。世の中にゴミ統計があふれているのと同じく、ゴミAIも多数存在するに違いない。特徴抽出の前段階である視野の限定だってAIには現時点では無理。昔のAIと同じで、入力と出力の規格化、データの解釈が一義的に決まっていること、学習に使うデータがまともであること、これらの条件をクリアしないと全く使い物にならない状況であることが分かった。

当面、人間は安泰かな。シンギュラリティなんて夢物語だね。

第6回

AIの歴史の話は終わりで、今回から実践の話。まずはスポーツから。野球、剣道、サッカーの話だった。

データサイエンスは、データの入力を整えるのと、出力後のフィードバックに一番労力がかかる。計算自体はすぐ終わる。

剣道では姿勢の補正や、どういう練習をしたらいいかにデータサイエンスの手法を使い、、先生の息子さんの所属する剣道クラブで実際に参考にしているらしい。

データを初めて野球に取り入れたのがノムさん。だから野球はデータを受け入れる素地がある。データサイエンスによる分析結果もかなり使われているらしい。

ところがサッカーで同じことをやったら「俺たちのプレイじゃない」と言われたという。あほか。受け入れやすいデータの解釈の方法を考える必要があると先生は謙虚におっしゃってましたが私はそんなんいらんと思います。

受験勉強とか、語学の学習とか、データサイエンスやAIは絶対応用できると思うんですけど、学習用データの取得と整備をどうしたらいいか、がとても難しそうです。いずれAI受験とかになったりしてね。

第7回

自動運転について。2018年時点の情報であり、賞味期限が早そうな話題。

2004年に米国DARPA(国防高等研究計画局)がグランド・チャレンジというロボコンみたいな自動運転コンテストを開催したことにより、一気に開発が加速した。

はじめは砂漠を走るだけだったのが、2007年(最終回)には街中を走り、交通規則を遵守する、人を模した障害物をよけるなど急速に高度なものになった。

ここで高い技術を培った団体がスタートアップになり、googleやアップル等がこれらを買収して、自動運転業界を牽引していくことになった。

自動運転にはレベルがあり、0~5まである。0がアシストのみ、5が完全な自動運転となる。現在レベル3を実現しようと、全世界でしのぎを削っている状態だそう。アメリカ、中国が世界のトップで、日本はまだまだ。アップル社が世界一自動運転の特許が多いらしい。

中谷先生が慶應新川崎タウンキャンパス(そんなのあったんだ!)で自動運転の試乗の実況をするところが楽しいです。

2018年時点で死亡事故は3件。まあ少ないですよね。

第8回

サービスロボットについて。主に慶應の学祭でやったロボット飲食店の話。

まずは2000年代のロボットブームと終焉について。AIBO流行ってましたね。ロボットはインタラクション(相互作用)機能が必要だけど、当時の技術では不可能で、AIが発展しないと無理だった。ペッパー君も流行ったけど、2018年頃には廃れた。いまははま寿司で受付として使われているだけ。

2012年頃、中国ハルビンでロボットレストランがオープンした。しかし子供がロボットの前に立ったらぶつかってしまう、注文をミスる、食事をこぼす、など問題があり半年で閉店した。

はま寿司でペッパー君が活用されるための涙ぐましい工夫と努力についても語られる。そもそもペッパーは丈夫に作られていない。手を振ったり何度も往復動作をすると止まる。故障する。悲しい話だった。なのでできるだけ動作を少なくして、かつ、お客さんに喜ばれる動作をするようにチューンアップしているらしい。

後半は慶應理工学部のロボット喫茶店プロジェクトについて。接客はペッパー。運搬は別の人(ロボット。HSRとジャコ2)がやる。注文は音声認識で行う。他にもカメラなどで客の要望を把握する。ノートPC10台で情報処理をする。慶應はロボットに強く、現時点これができるハードは慶應だけが持っているらしい。

応用されている技術は知識ベース推論、音声対話、顔認識。入店検知をしたり、注文を正確に確認識したり、店内の環境の状況(環境地図)を作ってぶつからないようにしたりする。

実際に2018年にロボット喫茶店は慶應の大学祭で公開した。ペッパー君が受付する様子、HSRとぶつかりそうになるが回避する様子、がライブで放送された。子どもが注文してた。上手に受付するなー。注文をうけて食事を作るのは早い。顔認識を使ってクレープにチョコで似顔絵を描く機能も(3分かかる)。累計250人が来て、17万円の売り上げ、8万円の利益。すごいね。

アンケート結果では、ロボット喫茶にはエンターテイメント性が重要になっていることがわかった。いまのところは楽しい体験という位置づけですね。ロボットが飲み物をお客さんに渡すと感激するらしい。

↓は2010年の様子

慶應三田祭で「ロボット屋台」 ペッパーが料理を仕上げ! – bouncy / バウンシー (moov.ooo)

第9回

間接業務とAIの関係について。

間接業務は裏方の事務作業などのこと。大学の間接業務を例にする。経理などの定形事務処理を効率化する。エクセルマクロはAIか?なんともいえないな。

RPAの説明。狭義には複数のアプリケーションにまたがる操作のマクロ化とか。これはAI関係ない。広義のRPAは言語理解などの処理を含む。

具体的に何をするのか?派遣事務職員が売上データを抽出し、エクセルファイルに転写する、業者ごとに合計する、FAX送信する、処理を自動化するなど。VBAで自動化することもある。ってやっぱAIじゃなくない?ただの自動化やん。プログラムはAIなのか!?謎だ。あ、ここはRPAの説明だからAIじゃないんか。

業務ルールは変更される。ハードコードしてると手間がかかる。なのでエキスパートシステムのように、ルールとデータを分けるのが良い。そうするとルールの変更が軽微なら、ユーザー側でも反映できる。BRMSという標準化された言語が使える。ルール文の作り方はよくわからん。印刷教材みよ。

出張旅費申請を例にして業務をルール文にする。日当と宿泊料の計算はルールを書ける。申請文は大量に提出され審査に膨大な時間がかかるので大変だからこれを自動化したい。講義を聞く限りWEBのアンケートみたいな定形入力にさせて条件分岐していけばいいっぽい。データベースに属性とか金額とかを入れといて、路線選択アプリなどと連携すればよいですね。開発では大したことやらなくていい。簡単なシステムで時間が1/3になったそうです。

意思決定にも使える。たとえば保険の自動査定システム。定性(初診から時間が短い)を定量(初診から3ヶ月以内)に変えていくことで自動化が可能になる。これで査定時間が1/5になった。

これAIか?ただのプログラムじゃん。しかも簡単。機械学習を伴わなくても、AIって呼んでもいいのか。。こんなのに人類の雇用が左右されてるんかい。

第10回

社会インフラについて。

古い橋梁や道路の点検診断をどうするか。笹子トンネル事件では目視で検査していただけなので検査がザルだった。目視のサポートが必要。

ディープラーニングでひび割れを検知する。まだ実用段階でない。ヒビの撮影がたりない。畳み込み型で学習したら、80%検出できるようになった。ドローンロボットも活用すると効率化できそう。分担がうまくいけば効率が高まるね。

etcの点検。点検開始から数時間ですぐ復旧させなけねばならない。点検業務プロセスを分析しクラスやプロパティに分解し、知識ベースを開発。インタビューによって属人的なワークフローをゲットしたりした。分析過程が一番大変そうだ。ナレッジグラフ、オントロジー、専門用語が難しい。複合知識データベースを利用して、スマートグラス越しに点検手順を教えるシステムを開発したそうだ。画面の実際の説明もあったが印刷教材を見ないとよくわからない。作業者が質問すると質問リストが表示されたりするらしい。蜘蛛の巣が装置の隙間に入ることもあるらしいので、注意とした表示される。

なんという開発に手間のかかるシステムだ、とおもう。実際のシミュレーションが難しい装置なら有効かもしれないが、割にあうのかこれ?システムをつかっても32%は操作が難しかったという。実行可能な操作は50%増。多いと見るか少ないと見るか。そして抽象化したワークフローはあまり役に立たなかった。上司のみ手順の見直しにつながったと評価している。

高速道路の雪氷対策について。雪で閉鎖はしたくないが、せざるを得ない場合。どのタイミングで閉鎖するのか。判断基準は属人化の程度が高く、インタビューに時間がかかった。気温や湿度で判断するが、根拠は何か。詳しくは印刷教材をみよ、だそうだ。凍結防止剤散布などの業務もプロセス化する。そうして雪氷対策教育支援システムを作った。システムで学習した新人は経験3年程度と同等の知識が得られた。

教育システムがあれば3年かけて実践しなくていい。システム構築は大変だが、効果はかなりあるようだ。塾でも応用できるか?

第11回

学校とAI。

文科省のリーディングプロジェクトについて。スタディログってなんじゃろ。生徒に合わせた個別学習がトピックらしい。

慶應理工学部の教師ロボット連携事業について。小学校の温暖化の授業で、児童の興味関心が続くような授業を依頼された。家庭科をやろうとしてもお皿の認識などが難しいのであきらめ、社会にしたらしい。教師とロボットがかけあう。面白く教えないといけない。子供が騒がしい場合にどうするか。授業づくりも難しかった。インスタンス関係やクラス関係の定義の具体例は印刷教材参照。このオントロジーってDLなのか?人間定義なのか?話を聞いているとどうも人間定義のようだ。インタビューを元に考えてる。たいへん。驚きなどの身振りも定義してる。

実際のライブの様子。すげー受けてる。??する?→動画を再生するよ!とか、ヒントだよ!とか面白いこと言ってる。かなり楽しく学べたみたいだけど、音声認識が難しい、時間かかりすぎ(これが一番致命的では)という課題があった。

慶應幼稚舎でてこの原理の授業の実験をした。ロボットアーム使ってる。児童の回答状況がわかるようにして、サポートを容易にするようにできるようになった。ただアームがなかなかものを掴めないのを、児童が応援してたのが微笑ましい。スパイダーマンの顔になって静かにせよと言ってウケたりしてた。もっとロボットと話したい児童もいっぱい。ロボットはエンタメ要素が強いですね。

教師がロボット授業を作れるようなツールの開発について。これは。。RPGツクールじゃないか!!ツールのセミナーもやってるそうだ。小型ロボットとpcが40万ほどするので価格の問題がある。高いツクールだなあ。

第12回

知的パートナーAIについて。

まずはナレッジナビゲーター。講義資料の準備など。論文の検索やスケジューリング管理とか。秘書のような機能を求める。30年前の提案だけどまだ全然実現せず。

対話が難しい。ディープラーニングによる対話は難しい(!)。やはり相関関係しか判定できないから。それっぽい返答はできるが因果関係は現時点ではむり。上位下位関係や意味関係、プロパティをオントロジーを使って定義しないといけない。

オントロジーは概念感の上下関係と意味関係を定義したもので、そのデータベースをナレッジグラフという。自動構築は難しい。手動しかない。なので開発が難しい。自動構築の仕組みを作る試みはある。例えばWikipediaから作るアプローチがある。時代小説、芥川、夏目漱石などの構造を作るがWikipediaには間違いもあるので、デバッグは大変。ナレッジグラフとして2000万のデータを構築して小学校で実験した。結構答えられてる。クイズには十分使えそう。宮台先生との対話も面白い。神様は存在しますか→関連してない=プロパティなしなので、哲学者にとっては面白かったみたい。人が勝手に深読みしておもしろがってるだけでは。今後の自然言語処理の発展に期待。

温暖化についての小学校での討論にオントロジーで強化したロボットを投入した。ある程度キーワードが照合した時、節電の説明とか火力発電で二酸化炭素が出るよと言ったりとか。ライブではロボットが声かけをしてくれてみんな興奮してた。やっぱエンタメ要員やね。杉並区立浜田山小学校だって。東京の小学校は恵まれてるなー。小5でエネルギー問題をかなりハイレベルなとこまで議論できてる。先生にも好評でした。議論の材料になったり、新しい可能性を開けたりする。子供たちの反応は、ロボットにできることとできないことがある、ということを学べたことが大きいそう。

討論にロボットを使う実験。プロジェクトディベーターと討論者で戦ったらディベーターが勝ったそう。範囲を絞って知識を構造化できれば説得的なセットは作れるんだね。といっても、まだまだ人手に頼ることになりそう。

第13回

ここまでのまとめとよくある質問への回答。復習事項が多くあまり新しいことがない。

ディープラーニングで囲碁が解けるならビジネス問題も解けるんじゃね?というよくある疑問には、残念でした、無理ですという回答になる。やはり相関関係しかわからないんで、構造化とか意味関連性に非常に弱い。AIはまだまだ人力勝負です。

機械学習と医者の診断について。医者は自分の経験にとても自信があるのでデータマイニングの結果は信用しないようだ。藤井くんを見習ってほしい。データの後処理ってかデータ利用者のリテラシーの問題じゃない?

自動運転でクルマは売れなくなるのか。売れなくなるというより、既存の構造が変わって大手メーカーだけでなく新興企業にチャンスが巡ってくるようになりそうだ。

資本主義は変わるか?という質問には、先生はまだAIのレベルは低い、AIとどう連携するかが問題となると言っています。

シンギュラリティは世界全体に起きるか。今起こっているのは、極めて限定された条件下でしか起きてない。先生はすぐに様々な業務が代替されると考えるのは時期尚早という立場。分野横断的な研究は重要になるだろう。とのこと。

AIの価値は。先生は職業をプロセスに分解して、意味理解は人間がやって、単純計算はAIがやるなど、役割分担が大事になるだろうと予想している。

コンピュータはまだ馬力しか出せない道具にすぎない。AI万能主義の夢物語をぶち上げる人の言うことは信用しないほうがいいね。

第14回

AIシステムと今後の社会について。いままでの講義のまとめが多い。

全体的に、AIが人間にとって代わるというのは間違いで、AIをどのように人間が活用していくかを考えよということを言っている。人間が得意なこととAIが得意なことは違う。AIって名前で議論しているけど結局、昔からロボットやらコンピュータやらについて言われてたことと一緒だよね。DLするなら一番大事なのはデータの質ということも、これまでの講義と一緒。

いいAIと悪いAIの話。ロボット三原則と同じように、倫理的な面から、AIにも開発上のガイドラインが必要ということ。悪いAIがネットワーク上で検出されたら、自動的に取り締まるAIポリスも考えられるけど、それも学習用データの質がなかなか、難しそうな話。中国の金盾って絶対AI使ってると思うんですけど、アルゴリズムが知りたいですね。軍事AIも面白そうですが、仮想の戦争するならデータとかルールとかのレギュレーションが大変そうですね。現実にはレギュレーションもないわけだし、手続きを統一するのは無理。まだまだ難しいだろう。

2018年、政府が提言したAI8原則?では、AIを人間中心にせよ、教育を充実せよ、などの原則があるそう。できるから作るのではだめ。人間中心というのは、漠然としてよくわからない(第15回でやるらしい)。悪意をもったAI=悪いプログラムなんで結局昔と何も変わらん。。データサイエンスは大学生の必須科目になりそう(大したことやらないと思うけど)。

AIの開発のためには知識の構造化、定義の明確化、インターフェースの充実、それから楽しいことが重要。これもいままでのソフトウェア開発と同じに見える。

第15回

AI国家戦略について。AIを経済発展につなげる。どうやって?

AI推進すれば10年程度で効果が出てくるらしい。マジで?IT革命みたいなもん?楽観的にすぎるとおもうけど。

主要国のAI戦略。アメリカではAIに優先的にお金出すんだって。でも予算は不明。GAFAが主導だから?

中国は国指導。特に自動運転に力入れてる。深圳がシリコンバレー化してるらしい。中国は医師が少なく、AI診療所が期待されている。写真とって薬ももらう。コンビニみたいですね。ただ中国ははまだ基礎研究のレベル低いみたい。2017年現在の話だけど。一兆円以上の金が投入されるらしく今後一気に発展しそう。中国の有名企業はBATHというらしい。バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイかな。半国有企業みたいなもんなんで強いっすね。

ヨーロッパ。EUでは12兆円投入して開発するらしい。イギリスでは医療、早期がん発見。ドイツではラーニングシステム(教育?)など幅広く。日本と連携して人間中心の開発をするらしいが抽象的でよくわからん。

日本。現実と仮想空間を統合する(ARみたいなもん?)ソサエティ5.0を推進。5.0みたいなの好きだね。

人間中心のAI原則について。AIのリテラシーを高める。悪用したり過度に依存しない。技術者は人文科学の素養も高める。プロファイリングの保護について。2019年8月リクナビが学生の内定辞退率を販売する事件があった。これはダメ。公正の原則。大企業にデータが独占される。これはどうしようもなさそう。アカウンタビリティ、透明性の原則。2018年10月、アマゾンが男性を優先した事件。機械学習に使った履歴書が男性のものが多かったから。データの質の問題。

日本では25万人〜50万人AI技術者を育成するらしいよ。少々勉強するくらいじゃダメだね。

AI兵器。自動で人を殺傷する兵器は禁止しましょう、という動きがある。

おわり。先生方ありがとうございました。